電車の中でのほんの些細な出来事(その四)

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高校生時代の事です。
私は大阪の阪急電車の沿線に住んでおり、堺筋線という阪急と連結した地下鉄を南下する通学でした。
電車は毎日それこそ窓が割れんばかりの押し詰め、ギュウギュウ状態。
でもそのギュウギュウ状態は地下鉄の天六(天神橋筋六丁目という駅)までで、
それ以降は少しだけ余裕が出来る。
電車の中では背中合わせか、目の前背中かどちらかが普通なのに、
その日はいつもと違い、目の前の女性が何故かこちら向きなのです。

天六までのギュウギュウ状態の時はいやだなぁ、と思いなるべく押されても前へは行かない様に踏ん張っていました。

で、天六が来てほっとしたのですが、その女性(美しい人でした)は私との位置関係を変えようとしない。
地下鉄に入ってからは左右の揺れもほとんど無いので、発車とブレーキの時の揺れのみ。
その人はその位置関係を変えないどころか、天六発車の揺れでいきなり私に抱きついて来た。いやしがみついて来た、という表現の方が妥当でしょうか。
発車の揺れのタイミングの時だけ誰かにもたれかかる、と言う事は珍しい事でも無いでしょう。
でも動き出して安定走行に入ってもまだそのままなのですよ。

私はその幸福な時間が一生続けばいいとさえ思ったほどでした。
私の幸福はほんの二駅か三駅の間だけでした。北浜という駅に到着するや否や、女性は何事も無かった様にさっさと降りて行ってしまったのです。
私は次の日もその次の日も同じ時間の同じ車両に乗ってはみましたが、その女性を見る事は二度とありませんでした。

という事で元の話に戻ります。