月別アーカイブ: 12月 2011



日本中枢の崩壊


なんて強い人なんだろう。

影の総理と言われるほどに上り詰めた人から、恫喝とも言える言葉を浴びせられ、大臣官房付という閑職にありながらも職を辞さずに耐え続けた。

自らが官僚でありながらも、その官僚の腐敗を指摘し続けることで上司からも同僚からも冷たい視線を送られる中、耐え続けられたその精神力の強さの源はどこからくるのだろう。
上司からは好条件の天下り先への斡旋話が来るが、自らのポリシーと異なるから、ともちろん蹴っ飛ばす。

もともとは小泉政権時代の構造改革路線上にある国家公務員制度改革の牽引役に引っ張られたまではいいのだが、小泉、安倍と続いた改革路線も麻生に至って停滞し、民主に変わって、全く骨抜きにされてしまう。
梯子を完璧に外された格好だ。

そんな中でも耐えていたのは、鳩管と続いたトンデモ政権が長続きしないだろうと踏んでのことだったのかもしれない。

だから、時の海江田経産相から辞職届を提出するように言われてもひたすら耐えた。
しかしその後の経産相を引き継いだ枝野氏からも同様の打診が来たために、さすがにこの政府に見切りをつけたと言わんばかりに退職した。

この本、その現役官僚の時に書かれた本である。

政治主導の改革と言えば、
小泉の郵政改革、中曽根の国鉄民営化、三公社の民営化が印象に強いが、最近よく耳にするのが橋本龍太郎内閣である。
現役でおられる時はあの能面のような顔からツンと話す話しぶりまでもあまり好きにはなれなかったが、あとあとの改革の大元を手繰って行くと大抵は橋本内閣に行きつく。
「社会保障構造改革」、「金融システム改革」、「経済構造改革」、「財政構造改革」、「行政改革」・・・・。
この本でも橋本内閣については触れられている。

私事ではあるが、先月マレーシアを訪れる機会を得た。
そこでまさに政治主導のお手本のようなダイナミックな施策をみることが出来た。
ジャングルの真ん中を切り開いて、ポーンと新たな最先端都市を作ろうと、いやもう作られているのだ。
その一つはサイバージャヤという先端産業の集積基地を作ろうという計画。
もう一つは、プトラジャヤという新たな首都を作ろうという計画、というよりももう実行されている。
東南アジアの国の首都はどこも年々渋滞がひどくなって来ている。
マレーシアの首都クアラルンプールはまだ他の国よりはましではあるものの、やはり渋滞はある。
この既存の首都を改修することよりもジャングルの真ん中に作った最先端都市プトラジャヤにすでに首相官邸はもとより、ほとんどの政府機関がそこへ移転。
緑豊かで道路も広いプトラジャヤには渋滞などはない。

方や日本では大阪で新たな政治主導が形成されつつある。
府知事を任期途中で辞してまでして、大阪市長選に臨んだ橋本氏。

知事の座に少しでも居座り続けたいような首長達とはハナからやる気も覚悟も全く違う。これも私事だが、私は大阪市民であり大阪府民。
だから市長、府知事双方への投票権を持っているわけだ。
私の周囲誰しもが「前市長はニュースでも読んでんのがよう似合うわ。とっとと去ってくれ」という声しか聞こえなかったのにも関わらず、結果、橋本圧勝とは言いながらも前市長に52万票もの票が集まった。
大阪市役所の関係者だけでそれだけの票は生まれない。
なんとも気持ちが悪いのは週刊誌などで異常なほどに展開された橋本氏へのネガティブキャンペーンである。

役人を敵に回すといろんなことが起きるのだろう。
だが橋本氏は大阪府で一度、戦い抜き、勝ち抜き、大赤字の大阪府を黒字優良自治体に持って来た実績がある。

古賀茂明の著した日本中枢の崩壊、くいとめるのは案外、大阪発なのかもしれない。

日本中枢の崩壊  古賀茂明 著



四龍海城


北海道の東の果て。道東に住む少年。

吃音のため、タ行とカ行で始まる言葉をまともにしゃべれたことがない。

話し方を笑われるのが嫌なので、話をしない。必然と友達はいない。
そんな彼が夏休みに入ったある日、海岸で一人遊んでいるうちに、引き潮で現れた地を歩いて行くうちに、満ち潮になってしまい、泳げない彼は引き返せなくなる。
その場所で彼が見たものは、彼の人生の中で見た中で、最も大きな建物だった。

もっとも彼はその建物の存在を知らなかったわけではない。
地元の人なら皆知っていただろう。
大人はことあるごとに「海岸に近づくな」と言い、海岸線に出たら「神隠しに合うぞ」と言っていた。
そこはどうやら、日本の領海内なのにそこは日本ではないらしい。

「神隠し」というのはまんざらウワサ話でもなかったようだ。
彼自身、その建物(四龍海城)への境界線を越えるや否や、外へ出られなくなってしまう。
門番から出城料を支払わない限り出て行く事が出来ない、と言われるが、その出城料とは一体何なのか。

どうやら、その建物=城の中には何千という人がいるようなのだが、彼は「大和人」と言われる人の集まったコミュニティへ連れて行かれる。
そこには拉致されてきた人。
迷い込んで入って来た人。
自ら入って来た人。など入って来る時はさまざまでも出城料とは何なのかが分からずに出られないという点では同じである。

大和人以外の人は城人と呼ばれ、城人は一切の感情を持たない。
嬉しいも悲しいも怒りも笑いも無ければ、過去の記憶も無い。
ただ、もくもくと働くだけ。

何をして働いているのか。
なんでもその建物は発電所なのだという。
その名も四龍海城波力発電所。

以前、経産省の課長をしていた人が残した言葉には、そこでの発電量は日本の電力の40%を賄っているのだと言う。

本の中には脱原発のムードで・・・とあるが、今年の原発事故発生後に書き始めた本ではないだろう。

後で書き足したのかな。

単に海流の波だけでは無く、そこで一日四回流れ、そして感情の無い人々が歌う四龍海城波力発電所の社歌からの波長。
どうもエネルギーの源泉の秘密はそのあたりにあるのかもしれないが、もちろん明記はされていない。

それにしてもそれだけの施設なら隠し通せるわけはないのだが・・・。
Google Earth に載らないということは、Google社を買収したのか?
陸から見えるぐらいなのだから、いくらでもインターネットに画像UPぐらいされるだろう。
日本の電力の40%の発電所ならものすごい規模の送電線網が敷かれているだろうに。
知床半島のすぐ近くで日本の了解でありながら日本では無い。
それをロシアが放置するわけが無かろう。

というあたりはスルーすべきところなのだろう。

さて、問題は出城料である。
金でもなければ、物でもないらしいことがだんだんわかってくる。

さて、その出城料を支払うと出られる代わりに何を失うのだろうか。
読まれてのお楽しみとしてしておきましょう。


四龍海城  乾 ルカ 著 新潮社