吉田キグルマレナイト
当初、読み始めた時はさほど期待していなかったのだが、エンディングが最高。
何やら自身のモチベーションまで上がって来そうな本だ。
吉田キグルマレナイトの吉田は主人公の在籍する京大の隣の吉田神社の吉田。
京大の学生でありながら、大学そっちのけで子供向けヒーローショーのアクション劇団に入り浸る青年。
本番の前には必ずトイレへ行かないと本番で腹が痛くなるという神経性の過敏性腸症候群だろうか。
そんな持病のため、アクション劇団はクビになるのだが、次に出会った「鞍馬からかさ一座」というのは相性が良かったようだ。
着ぐるみをかぶれば、何故か失敗しない。
とんでもない失敗をするはずが、偶然にもいい結果になってしまう。
着ぐるみの中から自分を叱咤する声が聞こえて来るし、着ぐるみが勝手に動いてくれる。
この著者自身、自ら人形劇団での役者や脚本を担当した経歴を持つ、と背表紙の裏に書いてある。
着ぐるみが何でも勝手にやってくれるとしたらそれはファンタジーだろうが、それは単にファンタジー的な誇張ということだろう。
どんな着ぐるみも一旦身に付けてしまえば、その外面の役に成りきって自分はもはや自分ではないということなんじゃないのか。
昨年、ゆるキャラコンテストなるものが世を騒がしたが、あれにしたって有名キャラのかぶり物をしているからこそ、子供に握手を求められ、美女とハグをしたり、キャーと騒がれもするが、中にいる人単体では女性に握手をしようとした途端、痴漢呼ばわりをされるのが落ちだ。
やっぱり着ぐるまれて、着ぐるみのやりたいことように動いてあげる、それがこの本で言うところの着ぐるみに全て委ねてしまえ、ということなのだろう。
なんだか、そんなに感動するほどのものでもあるまい、と思いながらもラストシーンのシーンなどはなかなかどうして感動してしまっている自分に気がつく、というちょっと変わった本なのだ。
なんでも「日本ファンタジーノベル大賞」の優秀賞を受賞したのだとか。
ちょっとジャンルが違うような気がしないでもなかったのだが・・・・とするとやっぱりファンタジーだったのか?