永い言い訳西川美和著
妻に先立たれると、男は何がどこにあるのかさっぱりわからず、てんてこ舞いなどという話はざらにあるので、この本の一部分は身につまされる人も多いことだろうが、この主人公氏、ちょっと行きすぎていた。
売れない作家時代は、まさに髪結いの亭主。
ヒモのような存在として奥さんに食べさせてもらっていた。
ちょっと作品が売れて、テレビのコメンテーターなどにも頻繁に登場するような存在になると、男の方は変わるが、妻の方は何もなかったかのようにこれまで通り。
そんな妻がだんだんとしんどくなっていく男。
妻は妻で売れなかった頃のような愛情はもはや感じていない。
まま、ありがちなことなんだろうな。
妻が突然のバスの転落事故で亡くなってしまう。
遺族となって妻の遺留品を示された彼、どれが妻のものなのか、全く分からない。
それどころか、どんな服を持っていたのか、当日出かける際に顔を合わせたはずなのに、どんな服を着ていたのかさえ、頭の片隅にもない。
それどころか、妻を失った悲しみがこれっぽっちも無い。
かなり性格的にもねじまがった男であることに違いは無い。
そんな台所に立つことになる。
同じバスで転落死した妻の友人の夫から声をかけられ、その子供の面倒を見るようになる。
所詮、ごっこでしかないにだが、男の心はみるみる変わって行く。
その変わりようが面白い。
そして愛していないはずの妻の存在をあらためて見つめなおしていく。
この本、本屋大賞こそ受賞そていないが、本屋さんが薦める本の上位にランキング。
やっぱり本屋さんの薦める本にはずれは無いわなぁ。