小暮写眞館宮部みゆき著
高校生が主人公の物語。
彼の周辺に登場するのが、普通のサラリーマン家庭なのにちょっと変わり種の父親と母親。
引っ越し先に選んだのが、売り手が「駐車場にするしかないか」と思うほどに家としての価値が無い古い写真館。
写真スタジオがリビング。その写真館の看板もせっかくだから、とそのまま残す。
高校生の名前は「花菱英一」なので下の名前の英一を省略して息子を呼ぶ分にはいいが、彼の友人が「花ちゃん」と呼んでいるからと言って、父も母も弟までも「花ちゃん」と呼ぶ。
何かおかしい。
テンコという幼なじみの父親もちょっと変わったキャラクターで、誰に似ているか、と聞かれれば、その世代によって全く別人に見られてしまう人。
ある年代には草刈正雄、ある年代にはキムタク、またある年代には・・と全く別人に似て見える、という不思議な人。
そんな不思議な周囲に囲まれながら、英一はいくつかの「心霊写真」と思われるものの謎を解明する。
という変な話なのかと思ったら、それは単なる前振りだった。
7年前にたったの四歳で亡くなった英一の妹。
その妹の葬式で、母は祖母をはじめとする親戚から鬼のような言葉の数々を浴びせられ、そんな言葉が無くっても、家族皆が全員自分のせいなのだ、と自分を責めている。
不動産屋の超無愛想事務員の手を借りながら、そんな状態から脱皮していく話でもあった。
それにしても英一君、高校生にしては守備範囲広すぎないか?