Missing甲田学人


地方のとある高校。
生徒の大半は寮で暮らす。
学校という閉ざされた空間の中で起こる様々な怪異現象。

第一巻は「神隠しの物語」。一巻、一巻での読み切りものだとばかり思っていたら、そうではなかった。
全13巻、全てストーリーとして繋がっている。
結構な大長編だったのだ。

同じ高校生でありながら「魔王陛下」などというとんでもない呼称でと呼ばれる少年が登場したり、方や魔女という怪しげな高校生、はたまた、異界の話の感染を防ぐ為の黒服の政府機関の連中まで登場するにあたって、さすがにこれは、マンガチックな筋立てなんだろうな、と思っていたが、単にそれだけではなかった。
呪いだとか生贄だとかかなりオカルトの物語と言っても差し支えないのではないかと思うが、単なる恐怖心を煽るだけのオカルトものでもなかった。

この作者かなり民族神話、民族伝承に詳しい。
柳田国男の影響をかなり受けているのではないだろうか。

結構、いろいろな文献も漁ったのではないかと思うのだが、参考文献なるものは一切記載されていない。

その博識ぶりは魔王陛下と呼ばれる空目という高校生の口から仲間達に説明される言葉として開示されて行く。ある時は民間伝承の内容を引いて、ある時は海外の童話の内容を引いて、ある時は都市伝説といわれるような民間での口承で伝わったような類の話を引いて。まぁ、こういうのを博識というのかどうかはよくわからないが・・。

6巻の鏡の話の中だけでも鏡にまつわる昔からの言い伝えなどどれだけ登場することか。

魔女というこの高校生だけは全く得体が知れない。
幼い頃から人には見えないもにのが見え、それらと会話をする能力を持ち、親からも不気味がられる。それがどんな経緯で本当に魔術を操れる本当の魔女になったのか、その経緯は不明である。
経緯は不明でもその目的とするところは終盤になってだんだん明かされて行く。

この作者、かなり物知りであることはよくわかった。
しかしながらこの話、エンターテインメントとしての要素としてはどうなのだろう。

話が重すぎて、なかなかページが進まない。
楽しむ要素がどうも少なすぎるような気がする。
寧ろ人を楽しませるために書かれたものではないのかもしれない。

いずれにしろ、仮に映像化するとしたら、かなりえぐいシーンの連発になってしまうのではないだろうか。
ということは、それだけでも充分にオカルトということか。

Missing 神隠しの物語 甲田学人 著(電撃文庫)