猫の水につかるカエル 


川崎徹と聞いてもすぐに思い浮かばなかった。
作者略歴を見てCMディレクターとある。

そうか。あの糸井重里なんかと共にコピーライター職業を一時世の花形職業として知らしめた人たちの中の一人だった。

かつてはテレビにも良く出ていたよね。

「ハエハエカカカ キンチョール」・・・なんか他のコピーライターとは一味も二味も違う、一風変ったライターさんだったような覚えがある。

あの花形コピーライターがこういう小説を書いていたのだとは・・。

猫がしゃべる。
あたり前の如くしゃべる。

ソフトバンクのコマーシャルで犬のお父さんがしゃべるのを散々見せ付けられてしまっている。ソフトバンクの犬のお父さんが今更、ワン!と吠えた方が違和感があるかもしれない。
そういうこともあってか、猫がしゃべってもなんか違和感が無い。

まぁ、猫がしゃべること云々よりも寧ろ、あの団塊の世代のエネルギッシュな人たちも、もうそろそろ自分の老いというものと死というものを見つめる時代になったのだなぁ、というなんとも当たり前のことながら、妙に寂しい気分になる。

「まだ、できると思っていても無くなるのよ、仕事は」
「ぼろぼろになるまで働かせてもらえないのよ」
猫の言葉は辛辣である。

良くも悪くも、日本の戦後というものはこの世代無しには成り立たない。

高度成長期に青春時代を向かえ、バブル全盛期には壮年としてバブルを謳歌し、そして今、この世代はどんどん世の第一線から退いて行く時代。

それと相前後するかのように、日本全体の活力が団塊の世代の後退と共に失われて行くような。

なんかそんなことを感じさせる本なのでした。

猫の水につかるカエル  川崎徹 著(講談社)