リカバリー・カバヒコ青山美智子著
新築分譲マンションに住む人々が、近くの公園にあるカバの遊具に悩みを打ち明ける話が5編、収録されています。
「奏斗の頭」「紗羽の口」「ちはるの耳」「勇哉の足」「和彦の目」
カバヒコと呼ばれるそのカバの遊具、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するというウワサがある。
「人呼んでリカバリーカバヒコ。カバだけに」がそのうわさ話の決め台詞。
自分の頭が悪いと嘆く男子高校生。
公立中学時代は成績優秀な優等生だったものの、引っ越しを機にエリアが変わり、おそらくレベルの高い高校に入学したのでしょう。初めての中間テストで惨憺たる成績を取ってしまい、すっかり自信喪失してしまっている。
幼稚園児を娘に持つ専業主婦。
ママ友仲間と言葉の行き違いで距離ができてしまい悩む。
3話目はブライダル会社でウェディングプランナーとして働く女性の話。
このカバヒコにあいに来る人たちは、特に具体的な病気とか、怪我をしていたり、というわけではない。
なんか他愛もないばかりであるが、病院に行っても解決しない、病名が付けられない、人からは分かりにくい自分だけのしんどさやつらさを持ち人たちがカバヒコを訪ねる。
自分の本当の気持ちを皆誰にも相談していない。
人に言ってもどうせ分かってもらえないだろうみたいな話をカバヒコという公園の遊具に話すことで救われていく。
そうやってご利益がある存在としてウワサ話は受け継がれて行く。
案外、ご利益があると言われる存在ってそんな風に生まれてきたのかもしれない。