心霊探偵八雲神永学


Missingの次に心霊探偵と続くと、このコーザーもとうとう心霊読み物コーナーにでもなったのか、と思われる向きもあるかもしれない。

こちらはさほど重苦しい話ではありません。

八雲という名の大学生。生まれた出でた時から左目が赤く、生みの親でさえ気味悪がったという。その左目には死者の霊魂が見えてしまう。

美術部の学生が、片目の視力を失ってしまい、将来の画家への夢を断ち切られそうになった時に、その見えなくなったはずの片目に異界が見えるようになり、異界で見えるものを絵画にして行く、みたいな話がMissingにもあったが、あちらは重苦しい話だった。

この八雲という学生、その特異な体質を使って迷宮入り、もしくは事件にさえならず、事故で処理された事件の真相を次々に解決して行くという、どちらかと言うと楽しい読み物の範疇である。

死者の霊魂が見える。死者と会話が出来るということを書くだけでも十二分に重たいだろうに、軽快な会話、スピーディーな展開がその重苦しさを須らく打ち消している。

八雲という学生と同じ大学の晴香という学生との掛け合い、八雲と後藤という刑事との掛け合い。それだけでもじゅうぶんに楽しめる。

それにしても八雲君の浴びせる言葉は、少々きつ過ぎるんじゃないでしょうかね。
いくら相手が行為を持ってくれていたにしても、そこまで言われてまだ着いて来る春香という女性に寧ろ関心してしまいます。

心霊探偵八雲〈1〉赤い瞳は知っている 神永学 著(角川書店)