この本を盗む者は
主人公の女子の曽祖父は町でも有名な本の蒐集家。
まるで図書館の如くに蒐集した本を読みに多くの人が訪れ、町そのものもにも本屋が多く、いつしか本の町として有名になっていた。
そんな曽祖父亡き後を継いだ祖母の代に、蔵書が大量に盗まれるという事件が起き、以降、一族以外の者の屋敷への出入りを禁じる。
そこで登場する「ブック・カース」という聞きなれない言葉。なんでも蔵書の本に呪いをかけたのとか。
屋敷は彼女の父親が管理していたのだが、父親が入院することになり、しぶしぶ屋敷に立ち寄る彼女。
彼女は本も嫌いなら、この屋敷を出入り禁止にした今は亡き祖母も嫌いで、この屋敷そのものも嫌いなのだった。
さて、そこからがファンタジーの世界の始まり。
おそらく妖精と言っってもいいのだろう。真白という名の謎の女の子が登場し、主人公もろとも読みかけていた本の中にいつの間にか入りこんでいる。
この町、読長町というのだが、町中の人も見知った顔ばかりなのに、全然別人の物語の登場人物になってしまっている。
本を盗んだ者を見つけないと、町は元通りにならないのだ。
そうやって雨男と晴れ男の兄弟の暮らす世界に飛び込んだり、西部劇のガンマンが活躍するようなハードボイルドの世界に入り込んだり、イメンスニウムという特殊な金属をめぐる『銀の獣』という話に入り込んだりする。
次の物語ではとうとう町の人たちが町から消えてしまう。
最後の物語で、そもそも大量に本を盗むというたくらみをしたのが誰なのか。
この一連のたくらみにそもそもどんな思いがあったのがが明らかにされる。
本嫌いの少女もいつの間にか本が好きになっている。
おおよそ、過去の本屋大賞にノミネートされるような本とは趣を異にしているが、本屋さんにすれば確かに嬉しい本なのかもしれない。