ブレイブ・ストーリー宮部みゆき著
ゲーム好きと言われる宮部みゆきさんの作品です。
RPGの世界へ入って行くんでしょう。
それにしてはちょっと前置きが長すぎませんか?
ゲームの異世界へ入って、次から次へと現われるモンスターを退治して行くんでしょう。最後はラスボスに勝って、良かった良かった、という話なんでしょう。
などと読む前から勝手にストーリーを想像してしまっていましたが、実際は全然違いました。
『ブレイブ・ストーリー』というその名の通り元気の出るお話しなのです。
この本、昨年映画化されたと言う事、読んだ後で知りました。
同じ昨年に任天堂さんのかの有名なDSのゲームにもなっていると言うではありませんか。
もうこんなところで本の事を語っている場合じゃないですね。
早速にでも、DVDを借りて来るなり、どんなゲームになったのかソフトを購入するなりしなければ・・。
と思いつつもこの本のこのぶ厚さはを思うとせいぜい2時間か2時間半の映像化なんて省略されすぎて到底観れたシロモノじゃないでしょうね。
仰向けになって本を読む、と言う姿勢ですと、本の重みを支えるのは左手の親指と小指の作業。
右手はページをめくる役割り。この『ブレイブ・ストーリー』上下巻ありますが、その一冊のぶ厚さときたら・・・。
左手小指が悲鳴をあげるので、結局仰向けという姿勢を断念せざるを得ないほどでした。
それだけ長い話、という事なのです。
主人公のワタルは現世にては恵まれなかったとは言え、そんな極端な事ではありません。
父親と母親の離婚話で父親が家を出ていった程度の事。
出ていった程度とは言え、そういう事は他人事とばかり思っていた本人には特に小学生だっただけに大ショックな大事件。
母親も相当ショックが大きくガス自殺を図ろうとする丁度その時にこの異世界=幻界(ヴィジョン)へ導かれます。
もっと以前からこの異世界へ行き来していたミツルの一家は悲惨そのもの。
同様に両親のもつれが原因だが、父親は一家全員と心中をしようとして、ミツルだけが生き残った。
母親も妹も父親も居ない彼との差はあまりに大きいのではないでしょうか。
ヴィジョンへでの彼ら旅人の命題は宝玉を5つ集める、という事。
宝玉を5つ集めれば、願い事が適うというもの事になっているが、そのために悪魔と戦う訳でも怪獣と戦うという試練が待っている訳ではない。
ワタルはハイランダーと呼ばれる自治警察の様なメンバの一員となり、犯罪に立ち向かいます。
ワタルは元々理屈っぽい性格でそれを同級生の女の子から指摘されたりしていた。
この異世界へ来て、ミツルに対抗するにはその理屈っぽさを最大限に発揮して戯言使いの様な存在になるのかと思えば、さにあらず。
ヴィジョンに来てからのワタルは怖いものからも逃げようとはせずに無茶だろ、と思わんばかりに単身で危険な場所に乗り込んで行ったりします。
この『ブレイブ・ストーリー』が与えた旅人への命題というのは自分自身が強くなる事なのでしょう。
それも肉体的な強さでも魔力でも無く、精神的に強くなる事。
子供が異世界へ行って旅や試練をして元の場所(現世)へ帰って来るというファンタジーものはいくつもあるでしょう。
結局夢の世界でした、というものやら、帰って来たとたんに不幸な現世の状況が一変して幸福を得られましたとさ、というものやら。
この話は少なくともそういう話ではありません。
結論を書くのはご法度なのでしょうが、この程度の事は書いても差し支えないでしょう。
要は何にも変わる必要が無かったと言う事。
一家全てを失ったミツルの場合は別でしょうが、ワタルにとっては自分自身が強くなれば、周囲の人を許せる自分になれば、それで充分だったのです。
でも勇気と元気がでますよ。この本。
宮部さん、いいじゃない。
さぁ、さっさとDS買って来よっと!