バージェス家の出来事


アメリカのメイン州で育った兄妹3人。

長男がメイン州を出て、次男のボブもメイン州を出てニューヨーク暮らし。
妹のスーザンだけは息子と共にメイン州にとどまっている。

長男のジムは有名な事件の無罪を勝ち取りアメリカ全土で有名になったようなエリート弁護士。
やり手ではないが、気の優しいボブ。

そんな二人の元に事件の連絡が入る。

スーザンの息子のザックがソマリ人の集まるラマダンの晩のモスクにあろうことか、血の付いた豚の頭を投げ込んだのだ。
中に居た人々の恐怖は相当なものだ。
小さい子供はトラウマになるかもしれない。

その事件をきっかけに二人の兄弟はメイン州に帰る。

メイン州というのは、若者は大学進学とともに地元を出て行き、そのまま帰って来ない。なんだか日本のあちらこちらの地方を思い起こさせる。

そこへ、ソマリアから大量に移民が入って来て、町の雰囲気は彼らが過ごした子供の頃とは一変している。

実際にはソマリアと言っても比較的治安のいいソマリランド、海賊国家ブントランド、治安の悪い南部ソマリアなどいろいろあるのだが、アメリカ人にとってソマリアなんて聞いたことのある人は稀だろう。
せいぜいソマリア=海賊と紐付くぐらいか。

移民が大量に来たってそんな程度の認識。

アメリカはもとより移民国家だ。
それでも住民が減少傾向にある地域で、大量に来た人々が、英語も話せず、女性はブルカを被って表情も見えない。
そんあ異教徒集団が集まって来てしまう、というのは気持ちのいいことでは無いだろう。
だからと言って、彼らにとって最も苦手な豚のしかも頭とは。

最も、この事件で一番傷ついたのは事件を起こした当の本人のザックだったのだ。

事件後もゆうゆうとしていた長男のジムだったが、ザックが行方不明になったことをきっかけに壊れ始める。

もうそれぞれ50歳を超える年になった兄妹なのだが、人生年をとっても何がきっかけで何が起こるかわからない。

そんなことを考えさせられる本だった。

バージェス家の出来事 エリザベス ストラウト 著  Elizabeth Strout著 小川 高義 (翻訳)