寂しい丘で狩りをする辻原 登著
婦女暴行の被害者となった女性と彼女を逆恨みして殺そうと考える男。
その彼女を守ろうとする女性探偵とその彼女につきまとうストーカー男。
二つの同時並行するストーカー事件の顛末。
たまたま、タクシーの相乗り依頼を許してしまったがために、つまりは親切心を起こしてしまったがために、タクシーを下車した後に男につけられ、襲われて強姦されてバッグまで奪われてしまう女性。
勇気を出して警察へ届けたために男は捕まるが、刑期はたったの7年。
強盗強姦は7年以上~無期懲役の罪なのだとか。
殺人の前歴もあるこの男が何故最も軽い刑となったのかはよくわからない。
先に出所して来た人から「警察には言わない約束だったのに・・・あの女、出所したら、絶対に殺してやる」とその男が言い続けていたという事を知った被害女性は、探偵事務所へ赴き、出所するところを見届けて自分を探そうとするかどうかを調べて欲しいと、依頼する。
男が探偵ばりの捜査方法で被害者女性の居どころにどんどん近付いてくるのはかなり薄気味が悪いし、怖い。
近所をうろうろするストーカーではなく、この男、殺意を持って追いかけているので、一般的なストーカーとは言えないだろう。
それでも警察としてはやはり、何か事件が起きてからで無ければ動いてくれない、というより動けない。
警察も少々のことで引っ張って、注意を与えたところでこんな男には効き目はない。
再度服役したって、また出てくるのだから、狙われた女性の恐怖は永遠に続く。
逃げ回らないための方策がかつての原告と被告が入れ替わることでしかないとすれば、やはりこの国の法制度はなにかおかしい。殺人犯に甘すぎる。
この本、合い間、合い間に古い映画の話が出て来る。
日本の古い映画などに興味のある人もそうそういないだろうが、そういう人には別の楽しみがあるかもしれない。