エデン近藤 史恵著
ツールドフランスという世界で最もビッグな自転車ロードレース。
3週間に亘って3300kmの走行距離を走破する。
毎年、コースは変わるが、ピレネー山脈とアルプス山脈は必ずそのコースに盛り込まされのだという。
つまりは平坦な道ばかりじゃなく、とんでもない登り、降りも走破してチャンピオンを決める。
この競技は個人戦だとばっかり思っていたが、チーム戦。
でも表彰台に上るのはやはり個人。
なんか理不尽な気がしなくもない。
各チームのメンバのほとんどはたった一人のエースのアシストをすることに徹する。
個人と個人が組むとも有りなら、チームとチームが組むのも有り。
総合1位になったエースだけがマイヨ・ジョーヌというジャージを与えられる。
他のチームスポーツのようにチームでW杯を受け取るのではないのだ。
主人公の白石誓は、たった一人の日本人としてこのこのツールドフランスに初挑戦する。
この白石の存在はまさにプロスポーツ界の椅子取りゲーム(ゼロサム社会)の真っただ中の存在。
限られたチーム数、そして次から次へと生まれて来る新たな才能。
スター選手にはいくつもの椅子が差し出され、悠々と好きな椅子を選ぶことが出来、次に年棒さえ文句を言わなければ楽に椅子に座れる者たちがいる。
そして残った椅子の奪い合いをしなければならないランクの選手たちがいる。
白石はその奪い合いをしなければならない位置に居る。
そして自分をアピール出来る最高の舞台であるツールドフランスの出場を前にして、所属するパート・ピカルディというチームからスポンサーが今期限りで撤退することを告げられる。
自チームのエースであるミッコというフィンランド人選手アシストに徹するのか。
次の就職に有利になる区間賞や山岳賞を狙いに行くのか、他のチームのエースのアシストをして、つまりは自分チームのエースを裏切って、他のチームに恩を売り、次の就職活動に役立てるのか。
そんな設定から物語はツールドフランスの3週間の全コースをなぞる形で始まって行く。
レース後の他チームへのオファーへ有利になるような選択をするのか、今のレースで勝ちに行くことを選択するのか。
人間の生き様の話なのかもしれない。
自転車のロードレースというもの。あまり目にすることはなかったが、今度中継でもやっていたら一度見てみようと思う。