不撓不屈(ふとうふくつ)高杉良著
なんと言っても実名なのである。
出て来る、出て来る。渡辺美智雄、津島雄二、小渕恵三、小泉純一郎、旧社会党の平岡忠治郎、勝間田清一、旧民社党の春日一幸、国税庁直税部長時代の鳩山威一郎・・・
こういう実名を目にすると、この「不撓不屈」という本、飯塚毅という税理士や税理士事務所、実物をモデルにした小説でも何でも無く、実話でなければならない。
これが実話だとしたら、居たのであろう。一介の税理士の立場でありながら、国家権力そのものと言っても良いキャリアバリバリの大蔵官僚を敵に廻して、戦った人が。
税は1円も余分に払うべからず、また1円の払いの漏れも有ってはならない。
完璧主義者であり、自身の仕事について100%の自信が無ければそんな事は出来ないだろう。
とは言うものの企業にしてみれば、そんな事よりも実務優先で、税務官僚を相手に真っ向から、などと言う気はさらさらなく、なるべく穏便に素早く片づけてしまいたい、というのが本音ではないだろうか。
企業たるもの最終的には何らかの社会貢献をする事を目的としているであろうから、税金を少々余分に払ったところでそれは許せる様な気がする。
許せないのはやはり年金制度だろう。そもそも年をとってから還元して欲しい人の為にある制度であれば、強制加入では無く任意加入という姿が好ましい。
これまで集めて来た年金運用資金を勝手に使い切ってしまった上で、若い世代が年金に加入しないなら財源が無いなどと言うのは運用して来た側の責任であって、若い世代の責任では無い。いっその事税金に一本化してしまったら良いでは無いか・・などと考える今日この頃である。
不撓不屈、この男ただ者では無い・・確かにそうだろう。
国家権力と真っ向から対峙する税理士。
この飯塚毅という人が非常に清く、正しく、凄まじい人である事は言うまでも無いが、
何故、税理士なんだろう・・とやはり思ってしまう。
貧しい布団屋の倅として生まれ、本来であれば布団屋を継ぐところだったのが、あまりに成績優秀にして、先生をしてその専門分野で打ちのめしてしまうほどに優秀な人が選ぶ道が何故、税理士だったのか、結局税理士という立場であったからこそ、この人が如何に優秀で理路整然と正しい事を行ったとしても、自分より年下の政治家である渡辺美智雄などに頭を下げ、政治家の力で助けられたのでは無いか。
ちなみにこの本を取り上げてみようと思ったのは、この本が映画化される話を聞いたからであるが、実はもう昨年に映画化されたのだという。
別段賞与という名の賞与引当金が争点である。さぞかし一般受けしない映画だったのではないだろうか。
上記は誤りでした。昨年に映画化は誤りでこの6/17に封切りだそうです。観に行かなければ・・。
ps.この文章かなり税理士や税金、税務署について突っ込んだ事を当初書いていたのですが、あまりに不穏当、という事で半分以下に割愛されてしまいました。