ツール・ド・ランス


タイトルは「ツール・ド・フランス」では無く、「ツール・ド・ランス」。
ランス・アームストロングという自転車のプロロードレーサーの果敢な挑戦を密着取材したドキュメンタリーである。

ランス・アームストロングという選手、1999年から7年連続でツール・ド・フランスを制した自転車ロードレーサーのスーパースター中のスーパースター。
2005年の優勝の後、一旦、現役を退いた彼が、約3年のブランクを得て現役復帰をするという。

自らもアマチュアのロードレーサーでロードレーサーの熱烈なファンである筆者は、彼の現役復帰を素直に喜べない。

ランスは勝って当たり前の選手。その勝つ姿以外のランスを見たくない、という気持ちがもう一度ランスの走りを見たいという気持ちより優先してしまうのだ。

ツール・ド・フランスとは自転車のロードレーサー競技の中の最高峰のレースで、3週間、3300kmとフランス・イタリア・スイス・・など国を跨いで行われる。
3300kmという距離、日本列島の北端から沖縄の南端までの距離よりも更にまだ長い。
それも山岳越えを何度も何度もという相当に過酷な競技である。

地元ではW杯サッカー、五輪に次ぐ大イベントなのだそうだ。

日本では自転車のロードレースという競技、あまりメジャーではないが、筆者が言うにはアメリカでも週に2回ほどの頻度で自転車を走らせるアマチュアの自転車人口は800万人も居るのだとか。
大阪もオバちゃんの自転車人口が多いがこれとは意味が違うんだろうなぁ。

自転車のロードレース競技というのは表彰台に上るのはチームではなく、個人なので、一見個人競技のように思えるが実は個人競技では無い。

チームにエースは一人。
他の選手はエースをひたすらアシストする。

一度、引退したエースが復帰する、ということは現在のエースとの確執が生まれるのは必至である。

その所属チームであるアスタナには次のエースであるコンタドールという選手がその位置を占めている。

そんな中へ復帰したランスがツール・ド・フランスに挑む。

このドキュメンタリーでは過去のレースなどの話を交えながら、2009年のツール・ド・フランスの全コースを走り終えるまでを一冊の本にまとめている。

走っているランスの写真が何枚か載っているのだが、実年齢よりも老けて見えてしまう。
そんなランスに自転車のレース界ではおなじみのドーピング疑惑がかかったり、年よりの冷や水的な批難の声が上がったりする。
それに対してランスが「Twitter」を駆使して応戦するあたりは、やっぱり今時なんだよなぁ。

それでもレースも中盤から終盤にさし掛かる頃には、ランスへの視線はどんどん暖かくなって行く。
ギャラリーの声援はもちろんのことだが。それだけではなく、スタッフやコンタドールを除く他の選手たちまでも。

それにしても、一生働かなくてもゆとりのある生活を送れるだけの賞金は稼いだはずのランスが何故また苦しい戦いに復帰する決断をしたのか・・。

レースを終えてしばらくした後のランスと筆者との会話の中にその答えは有った。


ツール・ド・ランス  ビル・ストリックランド 著  安達眞弓 (翻訳)