迷わない


櫻井さんの本ということで、今の日中問題、日韓問題などの話題もかなり踏み込んでいるのだろうと思っていたが、全然違った。

櫻井さんの生い立ち。
学生時代の決断。
ジャーナリストとしての一歩を踏み出した時の経験。
テレビのキャスターとして招聘された時の決断。
16年間務めたキャスターから身を引く時の決断。

そんな自らの人生の節目節目での決断に至る過程を振り返って書いているのがこの本だ。
イデオロギーも主義主張に関しての記述もこの本にはない。

日本の高校に通いながらも父の居るハワイ大学へ行き、そこで父から突き放されても尚、ハワイ大学に残る決断をする。
凄まじい父で彼女は一文無しで放りだされる格好。
それでもその父の一貫性に対して彼女は感謝をしている。

櫻井さんの社会人としてのスタートはアメリカの新聞社の東京支局での勤務。
その支局でアメリカのプロの女性ジャーナリストのアシスタント兼通訳として働く。
どんな雑用からも将来プロとしてやって行くための学ぶべきところを発見するという気概に惚れてしまう。

櫻井さんはその米人女性ジャーナリストから多くのことを学んだと述べておられる。

櫻井さんはどんな意見の合わない人が相手でも常に笑顔でやさしく分かり易く話される。
優しい笑顔でありながらも主張される内容そのものは核心に迫るもので相手にとってはかなり辛辣だったりする。
日本のサラリーマン社会では決して学べないことをその人の下で学んだことが今日の櫻井さんを培ったのかもしれない。

キャスター時代に原稿をわかり易い言葉に置き換えたからといってクレームをつける記者たちに対してとことん誠実に対応し続ける内容なども書かれている。

交渉上手で信念を曲げない凛とした櫻井さんみたいな素敵な人がどうやって出来あがって来たのか。
人生の岐路でどちらの方向へ行くのか、常に人生は迷う事ばかりだ。

「迷わない」という櫻井さんのこの本、若い人の必読の書ではないだろうか。

迷わない 櫻井 よしこ著