君の膵臓を食べたい住野 よる著
ブックカバー無しで人前で読めないようなタイトルつけないで欲しいなぁ。
グロいもの読んでいるようにしか思えないもんなぁ。
内容はグロいどころか、その正反対の本。
人との関わりを一切避けて生きてきた高校生。
学校へ行っても友達の一人もいない。
それどころか、名前さえ定かに覚えていない。
そんな面倒なことをするぐらいなら、読書に熱中していた方がはるかに楽しいとはばかる男の子。
そんな彼がたまたま、病院のロビーのソファで見つけてしまった一冊の文庫。
その名を「共病文庫」という。
文庫と言いながら、つい1ページ目だけ目にしてしまうと中身は日記帳で、書いている人はどうやら、余命が1年と言い渡された人らしい。
それがあろうことか、彼のクラスメイトの女の子だった。
明るくて友達も多い。クラスでも人気者の女子だった。
彼女は、病気のことを、親友にもクラスメイトにも秘密にしていたのだが、彼には本当の事を告げる。
他の親友に告げていないのは、告げてしまえばボロボロ泣かれたり、同情されたり、と彼女が望んでいる関係性が壊れてしまうからなのだが、彼の場合は他人への興味が無いし、そんな話を聞かされたところで動揺しないし、他言しようにも彼にはその友達がいない。
そんなことで秘密を共有したことがきっかけとなって、彼女は彼をあっちこっちへ連れまわす。
焼肉を食べに行ったり、福岡へ旅行に連れて行かされたり・・。
彼女の「死ぬ前にやりたいこと」に付き合わされることになるのだ。
彼は自分は草舟のように流されるだけ、と思っていたはずなのに。
彼はいつの間にか彼女に感化されて行く。
草舟のように流されている様で、実は全部自分が選択したのだ、とだんだん気が付いて行く。
全く正反対の二人なのだが、二人の会話は軽妙で、特に彼のセリフは小気味良く、彼女が「死」に関するジョークを気軽に口にした場合、普通の友達ならたじろいで会話が続かないような場面で、ごくごく自然にジョークを打ち返す。
小学校時代から友達がいなかった人とは到底思えない。
まるで、彼女の残された時間は彼を矯正するために費やしているかの様だが、そんな彼女にとっても彼の存在は必要不可欠だった。
最後まで読めば、やはりこの本のタイトルは「君の膵臓を食べたい」しかないんだろうなぁ、とは思うのだが、この本、このタイトルでだいぶん損をしたんじゃないだろうか。
他人事ながらついつい気になってしまう。