盤上の向日葵
一昨年、昨年の藤井聡太氏の活躍により、将棋の世界がニュースに登場する頻度がかなり増えたが、日本のプロ棋士は200人にも満たない。
本気でプロを目指すなんていうのは東大よりもはるかにはるかに狭き門を潜らねばならない。
埼玉の山中で発見された白骨遺体が手にしていたものは、日本でたったの6つしか作られていないという名人駒、名駒中の名駒で、将棋指しなら誰しも一度は拝んでみたいと思う一品。
そんな高価で貴重なものをなぜ白骨遺体に持たせたのか。
殺人だったとしても、殺す相手にそんな貴重なものを持たせるなど考えられない。
そこで、捜査にあたるのが、元奨励会所属で一度は棋士を目指したという若手捜査員と、気難し屋のベテラン捜査員。
彼らの捜査の話と並行して、ある少年の生い立ちが語られる。
父親は飲んだくれの弱いばくち打ち。
マージャンではカモにされるほどに。
少年は父親に暴力を振るわれ、食事も満足に与えられず、毎朝新聞配達で家計を支える。そんな彼に将棋の手ほどきをしたのが、ご近所の元教育者の先生。
その先生夫婦から養子縁組の話を持ち掛けられるのだが、その時に受けていれば彼の人生は大きく変わったことだろう。
いや、そうでもないか。
飲んだくれで博打に負け続けるオヤジの元に居ながらも東大へ入れてしまうんだから。
強いはずの東大将棋部に彼の相手になる者はおらず、たまたま入ってしまった将棋クラブで再度彼の将棋熱に火が付く。
この話、捜査の二人はいつかは彼に近づくんだろうなぁと思いつつも、なんでそうなった?が最後までわからない。
将棋ファンならずともなかなか楽しめる一冊です。