スプートニクの落とし子たち


1957年、ソ連の打ち上げた「スプートニク」は世界初の人工衛星として、地球周回軌道にのることに成功。
ソ連に一歩も二歩も遅れをとってしまったアメリカは科学技術の発展に力を入れ、宇宙開発での競争でなんとかソ連に追いつき追い抜こうと躍起になる。

そしてその余波は日本にも訪れ、理工系の学生を増やそうと各大学が理工系の定員を大きく増やして行く。

そんな中でこの著者の世代も理工系の枠が拡大する中、東大の工学部へ進学。
その東大工学部へ進学した同期生達のその後を描いているのだが、著者がこれを書いた目的とはいったい何だったのだろう。

プロローグで書いているような現在の理工系離れを食い止めようという試みが為されているとは到底思えない。
自らを「ベストアンドブライテスト」だと名乗って恥ずかしくないというのはいったいどんな神経の持ち主なのだろう。

サブタイトルは「理系エリートの栄光と挫折」。
いったい彼の言いたい「栄光」とは何なのか?
何を持って「挫折」と呼んでいるのか。
「後藤」という友人をして「挫折」と言いたいのだろうか。

この人から見て挫折であったとしてもご本人は最後まで学生に人気の教授だったというではないか。
人生の途中で少々横道を歩んだことが挫折という範疇に入るのだろうか。
まぁ、ハナから価値観の違う人?人達?みたいなので、挫折の概念も当然違ってしかるべきだろうか。

まぁ、それにしても同期で何人教授になったとか、何番目に教授になったとか、よくそんなくだらないたわごとをつらつらと書いているものか。

高校時代の成績一番が誰で学年十位以内に入って云々などということを何十年も引きずっている、そんな人達の存在そのものが信じられない。

教授になって何をする、ではなく教授になることそのものが目的のように見える。

政治家になって何をする、という信念も無く、政治家になることそのものが目的の人達と良く似ている。

総理大臣になって何をする、という信念も無く総理大臣になることそのものが目的だったとしか思えない誰かさんみたい。

この方、金融工学をご専門にされて来られた方なら、サブプライムローンの破たんに警笛を鳴らすなりのことはかつてお考えにならなかったのだろうか。
ならなかったのだろうな。なんと言っても「ベストアンドブライテスト」の方々なのだから。

この本、おそらく多くの読者に読んでもらうことが目的で書かれたのではなく、同級生に読んでもらう事を第一義において書かれた本なのだろう。
最後まで読んだが、残念ながら本書から学ぶべき点を何ら見つける事は出来なかった。

それにしても「スプートニクの落とし子たち」だなんて大仰なタイトルをつけたものだ。
小惑星イトカワの観測結果を持ち帰った探査機はやぶさを飛ばせた科学者達の話だとか、そういう類の夢のある話かとばかり思ってしまった。

せいぜい、「東大工学部何○期生の皆さまへ」ぐらいのタイトルにすればよろしかったのに。
タイトルに騙されてしまった。