回廊の陰翳広川 純著
琵琶湖疏水に男性の死体が浮かぶ。
亡くなったのは京都に総本山を持つ宗派の僧侶。
昔、水泳でインターハイまで進んだ友人が溺れて死んだという事故死扱いに大学時代の親友達は納得行かない。
時を同じくしてその総本山にある寺院から国宝級の仏像がある会社の社長に売却されたという告発文が警察に届き、警察は内偵を始める。
僧侶の親友達もまた警察とは別に友人の死の原因を調査しはじめる。
著者は元々は保険会社の調査員の仕事を元々を行っていたのだというだけあって、尾行、張り込み、聞き取りの最中にやったことのある人でなければ出てこないような気づきがかきまみえる。
京都では「白足袋族に逆らうな!」という暗黙の掟が古来よりあるのだという。
その白足袋族の筆頭が僧侶。
その僧侶の総本山のトップ。
管長や総長は議員による選挙で決まるのだとか。
公職選挙法の対象外なので、どれだけ札束が飛び交おうが選挙違反で捕まることはない。
そんな札束選挙で選ばれた総長や管長が祇園で派手に遊び、妾を別宅に持ち、全国の傘下の寺院から集まったお金を私物化する。
この本、京都の本屋大賞にあたる京都本大賞のBEST3の一冊。
確かに京都の知っている地名がいくつも出て来る。
京都人にというより、京都に観光で良く来る人などが喜びそうな本だ。
広川純という作家は、なんでも前作のデビュー作で、松本清張賞を受賞したのだとか。確かにちょっと松本清張っぽい作品だな。