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ダンブラウン



インフェルノ


今回もラングドン教授が主人公として登場。

テーマは地球の人口問題。

19世紀の初頭には10億人だった地球の人口が20世紀初頭には20億人に。100年で倍。それが次の50年でさらに倍になり、21世紀の頭、つまり現在では70億人を超える。
この100年の間に人類は地球に誕生してからの何万年、何十万年に体験したことの無いような急激な増え方をしているわけだ。

その人類の急増と全く同じタイミングで発生して来たのが、以下の数字のはねあがり方。
清浄な水の需要、地球の表面温度、オゾン層の減少、海洋資源の消費、絶滅種、二酸化炭素濃度、森林破壊、世界海面の上昇。

いずれもこの100年で急増し、近年はおそろしい勢いで増えている。

そして人口増加はますます進んでいる。
このまま放置すれば、人類は滅亡する。

人類を適正な数まで減らさなければならない。

そう考えたのは、ゾブリストという遺伝子工学や生化学の天才学者。

中世ユーロッパで流行した黒死病。
それによって人口が減ったからルネッサンスの黄金時代を迎えられたのだ、と。

彼によると、地球の人口の適正水準は40億までだろう、という。

こういう思想を持った人間が何かをやらかす準備を整えたメッセージを残して自殺してしまったので、ウィルスによる大量殺人を誰しも考える。

それを予定日までに阻止しようと、ゾブリストが残した暗号をラングドンが解読していく、というお話だ。

ネタバレにはしたくは無いが、最終的な解決策は果たしてどうなんだろう。
日本などは少子化問題を喫緊の課題としてあげているが、この解決策だと少子化にはさらに拍車がかかる。

人口減の前に全世界が少子高齢化時代を迎えてしまうことになるのではないだろうか。

それに水の需要や地球の表面温度・・・という上記の問題点は果たして人口増が問題なのだろうか?

最も引き金を引いているのはここ数十年の新興国の急激な発展なのではないだろうか。
特に人口がどこよりも多い近隣の某国などは天然資源を世界に求め、世界の海洋資源も買いあさり、自らの国の環境破壊も著しい。

彼の国では、あの悪名高き文化大革命時の方が世界にはハタ迷惑ではなかったかもしれない。

彼の国以外でもアマゾンやボルネオのジャングルの乱開発。

これらはこれから生まれる人口が減ったところでどうにかなるわけではないだろう。
今生まれている世代だけで充分に破壊しつくしかねない。

各国で文化大革命ではないが、強制帰農のような政策が出て来る以外に方法はないんじゃないのか。

まぁ、そんなことをつらつらと考えてしまうわけだが、何と言ってもこの作者の魅力は歴史・芸術に対するうんちくだろうか。

今回はフィレンツェ・ヴェネツィア・イスタンブール、この3カ所。

行ったことのある人もこれから行く人も一読に値する。ダンテやその時代に興味のある人たちには特にたまらない一冊だろう。
いや上下巻なので2冊か。

インフェルノ ダン・ブラウン著



ダ・ヴィンチ・コード


これまでここで取り上げられる作品は、丁度もうじき映画化、もしくはドラマ化されるものを選んでいるフシがありますが、そういう意味ではこの「ダ・ヴィンチ・コード」は、時期を逸してしまっていますね。既に映画化されて映画でも大ヒット。この作品についての賛否両論はいろんなメディアで取り上げられています。
もう今更、と言った観が無きにしも非ずなのですが、敢えてUPしてもらう事にしました。

上・下巻共、書き出しはこの一文から
「ここに記述されている事は全て真実を元に書かれている」

筆者は真実だ、と敢えて言っているのは推理小説っぽい展開があるからでしょう。
但し、その歴史的背景は全て真実です。と断わりを入れている。
この一文がまたクリスチャンを刺激するのでしょうね。

また、この本の中核を為すシオン修道会の歴代総長の中にレオナルド・ダ・ビンチ アイザック・ニュートン ヴィクトル・ユゴー ジャン・コクトー などの名前が出て来るのが興味深いですね。

イエスは神であり、神の子だ、という事を信じているクリスチャンに、敢えて真実はこうですよ、と言ってあげる必要などあるだろうか、という気は確かにします。しかしながらキリスト教そのものが歴史に与えた影響はあまりに大きいので、真実を探求する事の方が大事な気もします。

キリスト教に限らず、仏教にしても大抵の宗教の敬虔な信者というもの、私の知っている限りにおいては、まず世知辛い世の中にあって世知辛く無い。何が何でもという欲が無い。日々非常に幸せそうに笑みと共に生きている、というのが私の実感としてあります。
先日もクリスチャンの方のお葬式へ行って来ましたが、一般のお葬式が規格品の様なものだとすると、クリスチャンの方のお葬式というもの、本当に心がこもっていて、亡くなった方への手作りの式、というイメージです。

この「ダ・ヴィンチ・コード」の映画が封切りされると同時に巻き起こった、各国での「ダ・ヴィンチ・コード」排斥運動と、あの無害な幸せそうな信者とはどうにも繋がらないのです。
イスラムの諷刺画を描いて、暗殺されそうになった人も居ましたね。
宗教というのは、そんな偏狭なものなのでしょうか。

誰々が水の上を歩いただの、死んで3日後に生き返っただの、マリア様が天から授かったのって、それそのもののを真実として、絶対否定を許さないものとして受け止めているから信者だという訳でもないと思うのですが・・・。
寧ろ大切な事は、教えの箇所なのではないでしょうか。
「右の頬を打たれたら左の頬を出せ」だとか
「汝の敵を愛せよ」だとか
「求めよ!しからば与えられん」だとか
「汝ら人を裁くな」・・・・という様な教えを大切にしているからこそ、一つの教義の元で信者を続けて行けるのでは無いのでしょうか。

では、なにゆえにさほどの排斥運動などが必要なのでしょうか。
こういう事なのでしょうね。
教会の行事は聖書の教えがと賛美歌が無くては成り立たない。
聖書や賛美歌の中にはイエスの復活だとか、神の子イエスはやはり人間では無く神で無ければ歌や教えに矛盾が生じるのでしょうか。

話を変えますが、この「ダ・ヴィンチ・コード」の主人公のラングドンという人物、物凄い博学ですので、宗教の事以外でもかなり勉強になりました。
その一つが宇宙で最も美しい数値だという「黄金比」(約1.618)を解説している箇所。
①ミツバチの群れにおける雄と雌の個体数の関係において、世界中どのミツバチの巣を調べても、雌の数を雄の数で割ると、その答えは黄金比になるという。

②巻貝の螺旋形の直径は、それより九十度内側の直径の1.618倍(黄金比)になる。

③ヒマワリの頭花に逆方向の螺旋がいくつも渦巻いて並んでいる。
それぞれの渦巻きを、同様に九十度内側と比較したときの直径の比率が「黄金比」。
黄金比は自然界のいたるところに見られる。そこまではいいでしょう。
人間の身体にも言えると言うのですが、
④頭のてっぺんから床までの長さとへそから床までの長さの比率が「黄金比」。
⑤肩から指先までの長さと肘から指先までの長さの比率は「黄金比」。
⑥腰から床までの長さを、膝から床までの長さで割ると「黄金比」。
  ⇒こうなるとちと怪しいですね。それって個人差があるんじゃないんですか?
でも事実に基づいて書いているのだから、事実なんでしょうか。

建築物においても、
ギリシャのパルテノン神殿、
エジプトのピラミッド、
ニューヨークの国連ビルに至るまで、建築寸法に黄金比が使われているのだそうです。

と結局、お茶を濁してしまいました。

ダ・ヴィンチ・コード〈上〉 ダン・ブラウン (著)  越前 敏弥 (訳)