ターミナルタウン三崎亜記著
三崎亜記さんがまたまた不思議な三崎ワールドを書きあげた。
隧道と呼ばれる植物のような通路やそれを作る隧道師。
植物のようなもので感情が伝わるものらしいので作るというより育てる、という言葉の方が合うかもしれない。
影の無い人たち。無いというより失ったという方が正確か。
鉄キチならぬ鉄道原理主義者たち。
現実界には無いものなのでじっくり読まないと理解しづらいものがある。
舞台は日本のどこにもない架空の町。
でありながら、逆に地方ならどこにでもあるような町に思えてしまう。
それは、地方の商店街が軒並みシャッター通りになっていき、このターミナルタウンも御多分にもれず、シャッター化しつつあるという背景。
かつてはじゃんじゃん人が住む予定で建てたニュータウンに閑古鳥が鳴いている様はまさにバブル景気とその後の日本の姿じゃないか。
その地方をなんとか活性化しようとする若者に対して、補助金さえあればいいじゃないか、ともはや諦め気分の大人たち。
この構図も今の地方商店街と似通っている。
なんとか地域活性化をしてくれるはずの計画が、地元に益を一切残さず本社のある首都にのみ益を出すチェーン店だらけの計画だったり・・・これもどこかで聞いたことのある話ばかりだ。
ターミナルタウン、大阪の北部で言えば十三や淡路のような駅だろうか。
いろんな線が交差して乗り換え客は多いが、案外改札を出る人は少ない。
その十三や淡路に特急はおろか急行も快速も通り過ぎるだけで乗り換えも不要になったとしたらどうだろう。
さぞや閑散とした駅になるんだろうな。
この物語に登場する静原というのもそういう駅だ。
アーケードがボロボロになっていよいよ取り壊されようという時に、よそ者の若者が提案したのが、鉄道でしか使われることの無かった隧道を使ってレトロな雰囲気の商店街を作ろう、というもの。
さて、果たしてこの架空の町、ターミナルタウンは地域再生を果たすことが出来るのだろうか。