偽装農家神門 善久著
なんか小学校の教科書の副読本みたいな、薄い本でありながら、なかなかにして中身は濃いものがある。
農家は社会的弱者である。
農業は儲からない。
農家は貧しい。
こういう一般的な農家像をばっさばっさと切り倒して行く。
いや実際に真面目に農業を営んでいる人を切って捨てているわけではない。
営農意欲が全くないままに農地を単なる資産として抱えている「土地持ち非農家」に対して舌鋒鋭く切り込んでいる。
「農地」という土地資産があるだけで、補助金は舞い込んで来るわ。固定資産税も極端に免除されるわ。しかもそれらのかなりのパーセンテージが農業をまともに営んでいない。
農地、という名前のまま、産業廃棄物の投棄場所になっていたり、ショッピングセンターやパチンコ店に転用されるのをひたすら待つ転用待ち農地であったり。
何よりも問題は、そういう実態を農水省そのものが知りながらも見てみぬふりをしていることなのだろう。
そして、農家の票を選挙に利用する政党。
かつての自民党も農家の票を票田としていたが、小泉政権の構造改革で一変した。
小泉氏は「自民党をぶっ壊す」と言って総裁になったが、構造改革で自民党の票田を自ら放棄し、実際に自民党をぶっ壊した。
しかしながらどうなんだろう。
果たして、本当に単純に手当さえばらまけば、票に繋がるなどと考えているのだろうか。そこまで日本人は無節操か?もらうものならもらわにゃ損損か?
もしそうなら、いつからこの国の人たちはこんなに心が貧しくなったのか。
もしそうなら、自らの国の子供達の将来を売ってしまっているのに等しい。
そうではないだろう。
大勝利の原因はばらまき手当をもらう事が目的では無く、あの前政権をそのまま信任したくない、という人がそれだけ多かったということではないのか。
現政権は、手当のみを期待する人が多いとばかり思っているのだろう。
だからこんな史上最悪の愚脳内閣が出来てしまったではないか。
この内閣が将来にどんなツケを残しているのか。
次の参議院選挙で単独過半数を取るまでは嫌われることからひたすら逃げ続けるのだろうか。
では、それでもし単独過半数を確保したとして、一体その先で何を実現しようとしているのだろう。
さっぱり見えない。
話を本に戻すと、農地基本台帳というものが、ここは農地です。というものを表しているらしいのだが、これが全く機能していないのだという。
まさに消えた年金記録どころのレベルではないそうだ。
この農地基本台帳を整備し直すところから始めるべきなのだろうが、GPSの機能を用いればさほどの労力も無しに整備できるのではないか、と筆者は述べる。
そんな事業を農水省が早めに立ち上げていたら良かったのに・・。
案外、あの人気の事業仕分けでばっさりと切られていたかもしれませんが・・・。