死亡フラグが立ちました


誰がどう見ても単なる事故死。
が、実は完璧に事故死と見せかけた殺人だったとしたら・・・。

主人公は都市伝説をテーマにした雑誌の記者。

舞い込んで来たのが、疑惑代議士秘書の交通事故死にまつわる話。
その代議士が疑惑を持たれて、その鍵を握る男とマスコミが注目し始めた時だけにあまりにタイミングがヒットしすぎるのだが、状況からみて単なる交通事故であるとしか思えない、という事件。

その事件を演出したのが「死神」と呼ばれる殺し屋で、そのターゲットになると、24時間以内に必ず死ぬ運命になるというのが都市伝説。その「死神」を取材して来い、と命じられる主人公記者。

その状況証拠だけを見れば事故でしかないはずのものでも、被害者がそこへ向かうように、またまた事故が起こるように誘導するトラップがいくつもいくつも仕掛けられている、という仕掛けの謎解きをして行くあたりは読ませてはくれる。

それでもねぇ。
バナナの皮で転ぶようにいくら誘導してみたところで、昔のアメリカアニメの世界みたいにバナナの皮ですってんころりん、なんてやつ見たことないし。
吉本新喜劇の浅香あき恵の鼻の油で転ぶ方が真実味があったりして・・・。

それにいくら事故の方へ事故の方へと誘導してみたって、所詮は誘導。
うまく行って軽傷。すごくうまくいって大怪我がせいぜいか。
この先何年もに亘ってトラップをかけ続ければいつかは・・、ということもあるかもしれないが、必ず24時間以内とはまた、ハードルを高くしてしまいましたね。
それだけ書き手のトラップのアイデアが問われてしまうわけだ。

それにしたって その報酬がたったの100万円、って安すぎるだろ!
一人の人間を誘導するにあたっての事前調査費用だって馬鹿にならないだろうし、誘導させるための人にも金はかかるわなぁ。

っていうより、突っ込みどころはもとより満載。
ミステリーものでも、ノンフィクションでもなんでもない軽いギャクタッチの読み物なので、敢えて突っ込みどころを満載にして、突っ込んでもらう反響を期待して書いているんだろう。

だからあんまり突っ込みを入れるのは作者の戦術にまんまと嵌ってしまったということになってしまう。
だからこのぐらいにしておこう。

「死亡フラグが立つ」という言葉、最近良く使われるようになった言葉。

もとより、この「フラグ」という言葉は我々コンピュータのプログラム屋さんの用語で、特定の条件の時に「フラグ」をON、OFFすることで後にこの「フラグ」をON、OFFを判断し、処理を分岐させる。

ちなみに「フラグ」を多用したプログラムは、下手くそなプログラムとして忌み嫌われる。

この本では「死亡フラグが立つ」場面をかなり多用しているわけだが、それ即ち多用したプログラム同様とは申しますまい。
こちらは単なる娯楽ですから。

死亡フラグが立ちました  七尾与史著