償いの椅子沢木冬吾


もし、警察という巨大組織が組織ぐるみで犯罪を犯したとしたら・・。
もし、警察の中でも特別に秘密のベールに覆われた公安という組織が、組織ぐるみで犯罪を犯していたとしたら・・。

この本では、警察の外部団体の財団法人が隠れ蓑になり、公安職員というとんでもない情報を得て来られる連中を配下に置く男達が、組織を使って犯罪を行う。
決して組織ぐるみではない。
組織を利用した一部の人間達の犯罪だ。

公安という特殊性がそうさせるのだろうか。
一般の警察の捜査では行われないような異様な命令を部下達は、たんたんとこなして行く。

主人公はその公安側ではない。
その公安組織に目を付けられた車椅子の男。

5年前のある事件以降、すっかり姿を消していたその男が現われるところから物語は始まる。
5年前に誰かに嵌められて、自ら親と慕っていた人を亡くし、自らも銃弾を浴びて、その生存すら危ぶまれていた男が、車椅子の姿で舞い戻る。

自らとその親にあたる人を嵌めた連中への復讐が目的なのか。

真相はラストのシーンまでわからない。

まさにハードボイルド小説。

いささか、ハリウッドの映画じみた小説ではあるが、分厚い本でありながら、一気に読ませられる、面白い展開の一冊。

償いの椅子 沢木冬吾 著