熱源川越 宗一


樺太という土地。
そもそも誰の土地だったんだろう。

いろいろと考えさせられる一冊だ。

日本が樺太にからんでくるのは有名な間宮林蔵が樺太を探検してからだろう。
以後、ロシアと日本がそれぞれ領有権を争い、明治に入って樺太・千島交換条約締結によって樺太はロシア。
日本は千島列島の領有権を得る。
日露戦争後の講和条約により、樺太は北半分がロシア、南半分が日本となり、さらに第二次世界大戦にての日本の敗戦により、またまたロシア領となる。

元々住んでいたアイヌの人たちは、明治に入ってのロシア領の時代に大量に北海道に移住し、日本語教育を受けるが、彼らから見ての和人は彼らアイヌの人たちを文明から取り残された土人として見下す者もいる。
日本は学校教育を与えようとするが、それはあくまでも日本人としての教育であって、本来アイヌの人たちが望むものでは無かった。
この本では、ロシア時代にロシアの皇帝の暗殺を狙った革命家の仲間と目されて、サハリン(樺太)に流れて来たリトアニア出身ポーランド系のロシア人が流刑地で生きる希望を失う中、知り合ったアイヌの人たちの文化にほれ込み、友達になり、彼らからは兄貴と呼ばれる。そんな人から見たアイヌ。
北海道の石狩に流れ着いたが、やはり樺太へ帰ることにした日本系のアイヌ民族3人から見た樺太の日本とロシア。
彼はその後、南極大陸への挑戦隊にも加わる。

文明とは何なのか。
日本は文明開化の道を選択し、平和だった江戸時代の文明を捨てた。
アフガンだって部族社会という文化を残すか、首都カブールのような西洋文明に触れた文明を選ぶのか。
タリバンの台頭で部族社会へと舵を切った様に思える。
中国はウィグル自治区をはじめ、各自治区で同化政策を強行に進める。

結局は強いか弱いかなのか。
一見、観光資源としてのみ残った様なアイヌ民族だが、その心意気は残っていると信じたい。
北海道の大抵の地名はアイヌ民族が使っていた言葉から来ているのだし。

熱源 川越 宗一著