友情
恋と友情が絡んで大変なのは、
今も昔も、男も女も同じなのだなぁと思いました。
ざっとあらすじ。
主人公の野島はまだ駆け出しの作家。
彼は友人の妹、杉子に恋をします。
野島にとって杉子は理想の女性。
想いはどんどん深く、妄想はどんどん大きくなっていきます。
野島がそんな恋心を打ち上げられるのは、親友の大宮にだけでした。
大宮も野島と同じく物書きで、作家として成功しつつありました。
互いに刺激しあい、心を許せる親友同士。
大宮は野島の恋を応援し、成就する事を願います。
しかし杉子は大宮を、大宮も杉子を想うようになり、
その事実が野島に知らされたとき、野島は大きく絶望します。
野島の杉子に対する気持ちはとても強いのですが、
杉子を理想化しすぎているのが難点です。
杉子という女性は野島が思うような理想の女性ではなく、かわいらしさもあれば、時にはずる賢さもある普通の女性のように思われます。
そんな杉子が野島に理想化されることを嫌い、大宮に惹かれていくのは仕方のないことだと思ってしまいます。
なんせ大宮という人は、頭がよく器用で、変な癖は無いけど芯のある男性。
女性に対して変にやさしくも無ければ、偉そうでもない自然体の人。
どう考えても野島より魅力的なのです。
しかし物語は野島の強い思いを土台に突き進んでいくので、
野島の恋が成就してくれれば、と願うようになっていきます。
しかし残念ながらそうはいかず、最後にドカンと事実が突きつけられます。
それまで冷静で、杉子に対する愛情を微塵も感じさせなかった大宮からの報告は、かなり衝撃的です。
その事実は彼の口からではなく、大宮と杉子の手紙のやり取りから知る事になります。なんだか知らなくてもいいことまで、二人の恋の盛り上がりを知らされます。
こんな形でなくてもいいのにと思いますが、友人にすべてを隠さずにぶつかって、どのような反応をされようともそれに耐える、というのが大宮が選んだ親友に対する姿勢なのでしょう。
野島は大宮のしたことに対して心から怒り悲しみます。そしてこれから待つ孤独を嘆きます。
その様子は痛々しいですが、同時にすがすがしさを感じます。
それは野島と大宮の間に隠し事は何一つ無く、互いに正直な感情をぶつけ合っているからだと思います。
二人にとって一大事なのだけれど、きっとまた立ち直る日がくるであろうと思えます。
最近は携帯でお手軽につながる友人関係ですが、これだけ本気で向き合う情熱があってこそ、本当の友人、友情と呼べるのかなと思いました。