崩れる脳を抱きしめて知念 実希人


広島から来た若いが優秀な研修医が、終末医療を専門にするかなり瀟洒な神奈川の病院へ研修に訪れる。その瀟洒な病院の中でもとびっきり高級部屋で、ここが本当に病室なのかと見まがうような部屋に28歳の女性が入院している。

弓狩さんという苗字なのに、ユカリと呼んで欲しいと言われる。

彼女曰く脳にいつ破裂してもおかしくない爆弾を抱えているのだとか。
脳腫瘍を抱えているのだ。

医者と患者の仲だと自分に言い聞かせながらも、彼女にどんどん心を奪われて行く若き医者。

この研修医、序盤からちょっと感情が表に出過ぎるのと、自分のプライベートをいとも容易く話し出すあたり、いくら研修医とはいえ、医者らしくない。
いや普通のサラリーマンだってアルコールも入らずにいきなりこんなべらべらしゃべらないだろう。

女を作って出ていった父親が憎いだの、金を稼ぐためにアメリカで医学をもっと勉強するだの。ほぼ初対面なんでそこまで言うかな。
今は直せない病気も直せるようになるために、とか、医療の道を究めるためにアメリカで学ぶとか、嘘でも言うんじゃないのか?

彼は外が怖くて外出が出来ないユカリさんの心を開き、外へ抵抗なく連れ出すことにも成功する。
方やユカリさんは彼の憎む父親が実は家族の事を最も思っていた真実へたどり着かせる。
この若い研修医ほぼ序盤からこの女性に惹かれていたのだろうが、その思いがだんだんと強くなっていく。

いよいよ告白するのか、と思った矢先、研修が終わって彼は広島へ。

そこへ彼女が亡くなったとの知らせが・・・。

そこから大きく展開が変わっていくのだが、そこらあたりで、あらためてこの本、ミステリーだったんだと気付かされる。

ここからのどんでん返しもまた結構楽しめる。

崩れる脳を抱きしめて 知念 実希人著

おすすめ