金魚生活楊逸


中国では縁起をかついで、時に人間より大事にされる金魚。

ひたすらその金魚の世話を店主から任される主人公の女性。
この女性は中国人のタイプというより寧ろ、控え目な日本人のタイプに近いように思える。
もちろん人口12億も居る国なので、一括りに「中国人のタイプ」などがあるわけもないのだが・・・。

それでもこの作者がそうであるように、大陸的な大らかさというか、細かいことを気にしない気風が一般的なのではないだろうか。

細かいことどころか他の民族はそうそう容易く国籍を捨てたり変えたりはしないだろうが、彼の国の人はいとも容易く他の国籍に乗り換えたりする。

主人公の娘はそういう意味で非常に彼の国の人らしい生き方をする。
日本の国籍を取得し、日本で働き、出産を迎えるに当たって未亡人であった母を呼び寄せ、そのビザの期限が切れる前になんとか母を日本人と結婚させて日本国籍を取得させようとする。
そんな彼の国の人らしい割り切りのはっきりした娘の親にしてはなんとも主人公の女性は奥ゆかしい。

まぁ、感想はそんなところです。

この「金魚生活」というタイトルは主人公に狭い金魚鉢の中で飼われる金魚を重ねようということなのだろうか。
良くわからない。
主人公の女性が日本へ来た時にも好んで着た金魚色の様な服と金魚を重ねて、結局自由に生きることを望まない主人公と鉢の中の囲われた金魚を重ねているのだろうか。

深い感想文にはならなかったが、芥川賞を受賞した作品よりも洗練されている様にも思えましたし、楊逸さんへの期待度は高まりました。

金魚生活 楊逸 著 (文藝春秋)

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