藁にもすがる獣たち曽根圭介


父親の代から永年営んで来た散髪屋でなかなか食っていけなくなり、閉めて職探しをしてみたはいいが、仕事など若い者でもなかなか見つからないというのに、歳を食った者がそう簡単に見つかるわけがない。
ようやく、つてを頼ってで見つかったのがサウナでの夜勤仕事のアルバイト。
たった一人で、受付から、酔っ払いの相手から、仮眠室での就寝チェックやら、何から何までやって、その上、若造の支配人にはことあるごとにいびり倒される。
それでも最低金銀の時間給。

妻がパートに出ているので認知症の母と同居しながらもなんとかカツカツに食っていけている。

その妻が階段から落ちて入院してしまう。

命に別条はないが、リハビリを終えるまでには相当な時間がかかる。
嫁いだ娘から金を無心されるが、余剰資金などはこれっぽっちもない。

認知症の母を放っておくわけにも行かない、ギリギリの選択の時にサウナへ置き忘れられたドでかいカバンの忘れものを思い出す。

数日前にドでかいカバンを肩から下げて 真夜中のサウナに来た男。

タバコを買いに行ったままとうとう戻らなかった。

そのドでかいカバンの中には、札束の山が・・・。

上の元散髪屋のオヤジの如くに、まさに藁にもすがらんばかりところまで来た人物があと二人の登場する。

FXなんぞに手を出したばかりに借金苦となり、夫からはDVの対象となり、自らは人妻デリヘルとして働く女。

ヤクザに借金をしてしまい、ヤクザから追い込みをかけられる刑事。

それぞれが同時並行で進行している話なのかと思えば、微妙に時間差があった。

その時間差が最後に絡み合ってそれぞれが繋がって行く。

まぁちょっとした時間つぶしには、楽しめる一冊かな。

藁にもすがる獣たち 曽根圭介 著