顔 FACE横山秀夫著
こういう視点からの刑事もの捜査ものの話はちょっとめずらしいかもしれません。
婦警の視点からの警察の署内とはいかなるものなのか。
婦警という言葉、実は例の男女雇用均等法以降、女性警察官に改まったと思いますが、小説内にては婦警という呼称を使用していますので、その呼称に倣います。
以前は駐車違反の取締りなどで、良く見かけた婦警さんですが、最近は民間のオジさん達にとってかわられてからというもの、とんと見かけなくなってしまいました。
以前は良く駐車している車の所にミニパトでやって来て、違法駐車車のタイヤの横でチョークを持っている姿を見かけたものです。
取り締まりとなると、なんとも冗談も通じない、固い顔をしてひたすら業務に専念する。話す言葉もお定まりの決められた言葉しか発しない、まるでロボットのようなイメージを持った頃さえあります。
それは婦人警官だから、嘗められてはいけない、という気持ちからなのでしょうか。
それともそれだけ若い人だったというだけかもしれませんね。
いずれにしても与えられた職務に忠実だった、ということには違いない。
どこぞの国の警官みたいに袖の下なんて絶対にありえない。
そんな清廉潔白な人達とだというのに・・。
それでも署内ではこんな理不尽な扱いを受けていたのでしょうか。
「ったくだから女は使えねぇ」とか、異動先の上司からは「婦警なんぞ廻されたら一人減と一緒じゃねぇか」などと酷い言葉を日々浴びせられる。
主人公は犯人の似顔絵描きを専門とする婦警さん。
だからタイトルも顔 FACEなのでしょう。
書いた似顔絵で犯人が迅速に捕まったので、警察の広報活動の一貫で記者会見を開く事になるのですが、実際に捕まった犯人とその似顔絵は似ても似つかない。
その似顔絵は「お手柄。婦警さん」の新聞見出しとともに掲載されるはずのもの。
上司は彼女に犯人の写真を渡し、似顔絵の書き直しを命じる。
それって改ざんではないか。似顔絵改ざんを彼女は拒もうとするが組織のため、上司のため泣く泣く改ざんをしてしまう。
良心の呵責に耐えかねて、無断欠勤の上、失踪、そして半年間休職。
そんな繊細な人には警官などという仕事は向いていないのかもしれませんが、ところがそんな繊細な主人公は似顔絵描きで培われた注意力、観察眼には人一倍の能力を持っているのです。
なんだかんだと罵声を浴びせられながらも結構、難事件の解決の糸口を発見したり、と活躍するのです。
世の中、犯罪の総数は以前より少なくなったかわりに、凶悪な犯罪やわけのわからない犯罪が多くなって来ています。
こんなご時世だからこそ、頑張れ婦警さん。と主人公のような婦警さんを応援したくなります。