不発弾相場英雄著
世界の東芝が危機に瀕している。
米で買い取った原子力子会社の破産が直接のトリガーではあるが、その前から不正会計という事件が何度か報じられている。
この「不発弾」と言う話。
バブル以降に日本の企業に起こった事をかなり緻密に書いているのではないだろうか。
ストーリーは大手家電メーカーの巨額の不正経理の話から。
ホリエモンの会社などは、わずかな金額のことで粉飾、粉飾、と騒ぎ、彼を一度は奈落に落としたわけだが、大手老舗企業であれば、どう見ても粉飾だろ、という会計も不正経理で済まされてしまう。これはおかしいだろう、と大手家電メーカーを追いかけようとする捜査二課の管理官。
方や、福岡の炭鉱町から這い上がって来た元証券マンの金融コンサルタント。
話はバブル以前からバブルの時代を経てバブル崩壊へ。
バブルがはじけて、銀行は不良債権を山ほど抱え、淘汰されるところは淘汰され、不良債権の処理もとうに一通り終わったものと思っていた。
銀行の土地取引なんぞは土地担保に金貸すはずが、土地担保に貸した金で買った土地を更に担保にして金貸した金で買った土地を更に担保にして・・・ってそりゃバブルになるわな。
株はどうか。
バブルがはじけても時価評価会計に制度変更されるまでの間であれば、どれだけ株価が下がろうと、サラリーマン経営者であれば自分が経営している間だけでも、赤が出なければいいのだ。株を買った時の値段のまま資産計上しておけば、実態の赤は表面化しない。
外資の証券マンになった連中や、金融コンサルタントは「仕組み債」言われるしかけを奨めて、一旦バブルで金の亡者になった連中に「夢を再び」の道へいざなおうとする。
エリート捜査二課の管理官は、この元証券マンの金融コンサルタントの黒い過去を調べ上げ、白日のもとにさらして大手家電メーカーもろとも検挙しようと試みるが、頭でっかちのエリートには想像もつかないほどに企業は彼を必要としているのだった。
こうして、企業内にはいつ炸裂してもおかしくない「不発弾」がたまっていく。