寿フォーエバー山本幸久著
とっても時代錯誤のような結婚式場。
寿樹殿という名前からして昭和の臭いがぷんぷん。
いや、昭和が嫌いと言っているのではない。
寧ろ平成より好きかも・・・
ただ、少々ずれている、と言っている。
正面玄関の一隅にある「ときめきルーム」だの、ピンクのハート型のテーブルだの・・・それどころか、上空から見れば、建物がハート型。
今どきゴンドラがある式場って・・・。
3階建てで上に行くほど狭くなる、ウェディングケーキを模した形状なのだという。
いやいや昭和全盛期だってこんな恥ずかしげな結婚式場はそうそうないだろう。
外壁がピンク色ってどうなんだ。
夜中にライトアップすれば、まさにラブホテル。
当然ながら、時代遅れの感は否めず、もっとはるかに規模は小さいがデザイナー達がプロデユースしたというフランス料理をメインにする新手の式場にどんどん人気を奪われて行く。
そんな結婚式場で結婚相手どころか彼氏もいない女性がいちゃつくカップルの結婚式の相談にのっている。
なんなんだ、この物語は?とかなり訝しげな気持ちで読んで行くうちに、だんだんとこの時代錯誤の寿樹殿に親近感が湧いて来るから不思議だ。
主人公の女性は、そんな時代錯誤の式場にあって、子供の一時預かり所を併設するプランを企画してみたり、メインの料理が無いなら、新郎新婦の故郷にちなんだ地方の料理をメインにするという毎回料理が変わるプランだとか、いろいろとアイデアを駆使する。
少年が現れて、まだ結婚式を挙げていない父親と母親の結婚式を二人に内緒で準備をしてくれだの、母親をゴンドラに乗せたいだの、お金が無いので模擬式をそのまま結婚式にあててしまうカップルだの・・・。
そんな彼らをここの人たちは温かく祝福する。
そう。この話、本当の祝福を。
祝福するとはどういうことなのかを、ちょっと変わった舞台を用いて著しているのです。