風の向こうへ駆け抜けろ古内 一絵


競馬のジョッキーという、これまであまり取り上げられることの無かった世界を舞台にした話。

主人公は芦原瑞穂という18歳の女性騎手。

中学を卒業すると全寮制の競馬騎手の養成学校に入り、男子生徒よりも優秀な成績を残して卒業。
卒業と同時に各騎手候補には就職先となる地方競馬の厩舎があてがわれる。

瑞穂にあてがわれたのは中国地方にある鈴田競馬場。
そこの中でも競馬馬の藻屑の漂流先と言われるような最も弱小の厩舎。

今や巷では「女性が輝く社会」というのが合言葉となった感があるが、競馬のジョッキーという男ばかりの世界に女性騎手が入って行くと皆はどんな目で見るのか。

「人気取り」どれだけ実力で勝負しようと思っていてもそういう目で見られる。
厩舎の職員は別にしても地方都市の市の職員などは広告塔としての役割りとしか考えていない。

競馬の専門用語も多々出てくるし、地方競馬のやりくりや人間関係なども、実際に経験した人で無ければ書けないのではないかと思える箇所がいくつもある。
かなり中まで入りこんで取材したのだろうか。

廃業寸前になっていく厩舎が起死回生。中央から捨てられたあばれ馬を調教し、彼女と共に中央の大レースへと乗り込んで行く。

なかなかに感動させられる一冊だ。

風の向こうへ駆け抜けろ 古内 一絵 著

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