兵士たちの肉体
アフガニスタンへ派兵されたイタリア軍の若い兵士達を描いたというあまり目にすることのない類の本。
兵士たちのこの戦いに対するモチベーションの低いこと。
なんでこんなところへ来たんだろ、任期をさっさと迎えてさっさと国へ帰ろ、ほとんどそういう空気しかないぐらいだ。
9.11テロ直後、アメリカ国内ではアフガン派兵を指示する人は圧倒的に多かったという。
その後のイラクもそうだが、果たしてアフガン派兵に大義はあっただろうか。
9.11テロはタリバンが起こしたわけではない。
ビン・ラディンをかくまっているかもしれない、という容疑だけ。
ましてアフガニスタンの民間人にはさらに何の罪もない。
そして、その敵とみなされるタリバンにしても一旦武器を下ろしてしまえば、民間人との区別がつかない。
アメリカがかつてベトナムで味わったような民間人か敵かわからない、いらいら感を各国の兵士は味わったことだろう。
イタリアの若い兵士たちはその見えない戦いで凄惨な犠牲者を出してしまう。
この本にはいろんなタイプのイタリア兵が登場する。
マザコンの童貞クン。
高額な衛生通信料を払ってネット上の仮想彼女と燃え上がる男。
皆のリーダーでありながらも女に身体を売る男娼だった小隊長。
そして、ほぼ主人公的な役割りなのが、うつの薬を服用する軍医。任期満了になっても帰国を断る人。
フィクションでありながらも「フォブ・アイス」という舞台で起こった惨劇は実際に起こったことをモデルにしているのいだという。
少々眠たいのを我慢する必要はあるかもしれないが、少々珍しいイタリア版戦争文学と言えるのだろう。