日露エネルギー同盟藤 和彦


今年(2013年)の1月に出版された本。
安倍首相が誕生して一ヶ月経つか経たないかの時期に出版され、その後の安倍政権の指南本にでもなったのではないか、とすら思えるほどに事実がその後をなぞっている。

タイトルこそ、日露エネルギー同盟だが、本書の大半はアメリカ、欧州、中国のそれぞれの危機、今後の心配事にページが割かれている。

アメリカでのシェールガス革命以降、もはやアメリカは中東の石油に依存する必要がなくなる。
となれば、アメリカは中東から徐々に距離を置き始めるのではないか。
ならばアジアに軸足を移すかと思いきや、アジアからも手を引き、アメリカは世界の警察であることをやめてしまうのではないか。
アメリカはかつてのモンロー主義ならぬ新モンロー主義に走るのではないか。

中国は成長が鈍化し、急成長で維持していた国内の不満を対外に向けるためにも、南シナ海、東シナ海での緊張状態をもっと高めるのであろう。
今後は、もはや戦争も辞さずの構えで来るだろうから、一触即発の危機は常にある。
アメリカのことも中国のことも複数の著名な方、著名な新聞の記事なども引用しながら説明されている。

このあたりのことについてとなると、以前、中国については誰よりも詳しいと言われる石平氏にお話を伺ったことがある。
石平さん曰く、尖閣周辺の緊張は今後何年も何年も続くでしょう。
中国は一触即発のギリギリのところまで、意図的にやってくるでしょう、
習近平は軍に対しても国内メディアに対しても強気の発言を続けるでしょう。
でも、一線を超えることは決してしませんよ。
そこでしくじったら習近平の立場がなくなるどころか、共産党一党支配の体制そのものも崩壊してしまうでしょうから。

と、緊張は続いても戦争にはしない、というご意見だった。

いずれにしろ、アメリカが中東から完全に引くとなると、ホルムズ海峡を通る原油に依存する日本に心配事が増える。

中東各国も石油の国内消費が増えつつあり、輸出一辺倒ではなくなってくる。

中国の覇権主義に対抗するための防波堤としてもその周辺国と緊密な関係を築く必要がある。

その中でも最も重要ななのはロシアだ、と。

そして、石油からガスへとエネルギー源が変わっていくのは、もはや世の趨勢である、と。
日本は樺太から北海道を経由して日本国中に建設された高速道路網を使ってパイプラインを建設すべきだ、と。
筆者の提言は続く。

安倍政権は発足直後に自ら東南アジアを歴訪し、GW期間中主要閣僚は東南アジア、自らはロシアへ赴き、プーチン大統領と会談。
2プラス2の立ち上げまで話を展開させてきた。

ロシアも実は中国との間でウラジオストックを巡って領土問題を抱えているのだ。

なんだか、ここまで符合してくると、この著者、ひょっとして安倍政権のブレーンにでも入ったのではないか、とさえ思えてくる。

もともと経産省から内閣官房へ出向した経歴を持つ人だ。
あながち有り得ない話ではないかもしれない。

日露エネルギー同盟 藤 和彦 著