神様のカルテ夏川 草介著
信州にある病院での話。
主人公の医者は2時間ばかりの仮眠をとっただけでまるまる二日間働きづめのフラフラ状態。
でようやく家へ帰れたんだから、寝りゃいいものを同じアパートの隣人のすすめにのって飲み始めてしまう。
それでまた睡眠時間を擦り減らして、病院から緊急のお呼びがかかり、またまたフラフラで治療にあたる。
そんな状態で治療にあたって大丈夫なのかいな、と思ってしまうが、どうも大丈夫らしい。
慢性的な医師不足。
研修医だろうが専門外だろうが、医者なら緊急医としてOKなのだ。
地域医療の実態をコミカルなタッチで描いている。
主人公の話す古風な言葉遣いが、その誠実さを強調している。
ご自身、信州の医学部を卒業後、信州で医療を行って来たということなので、かなりの部分は実体験にもとづいたものなのだろう。
大学の医局へ行って最先端の医療を身につけて来い、との友人からの忠告。
果たして最先端の医療とは何なのか?
最先端を使えば、生き永らえさせることは出来るだろう、だが、そこに人間としての尊厳が残っているのかどうなのか。
どんな人にも必ず訪れる死。
その時を迎えるにあたって、その人は幸せだった、と言い切れるのかどうか?
まさに最先端医療というものの首根っこにやいばを突き付けたような作品だ。