朝が来る辻村深月著
子供が出来ない時ってこんな感じになるのか。
妻が母親に言われて不承不承、不妊検査へ行くと、亭主もつれて来なさい、と言われる。
それを亭主にちょっと言ってみた時の亭主の機嫌の悪いのなんの。
妻の不妊治療ののはずが夫の不妊治療に変わって行く。
そんな辛くて長い長い不妊治療、その長い長いトンネルを超えた先が、養子縁組で、ようやく、朝が来るなんだ。
と思いきや、この話の本筋はここからだった。
養子縁組を取り持つNPO団体は、そもそも子供が出来てしまったが、育てるつもりのないような若い母親から赤ちゃんを預かり、子宝に恵まれない夫婦に養子縁組の世話をする。
このタワーマンションの夫婦にもらわれた赤ちゃんにも当然、母親が居り、その母親の話が本筋なのでした。
子供を授かってしまったのは彼女がまだ中学生2年生の時。
同級生の中でもちょっとカッコいい男子と付き合えて、ちょっとした優越感に浸り、避妊もせずにそういう仲に。
妊娠がわかると両親は養子縁組の世話をする団体をみつけて来て・・という展開なのだが、結構、養子に出して彼女が普通の女の子に戻ったわけではない。
世間体だけを気にする親に見切りをつけ、親を捨て、一人で生きる決心をする。
そんな彼女が苦労をしないわけがない。
養子縁組で子供をもらい受けた夫婦には、長い長い不妊治療の後の「朝が来る」なのだろうが、子供を渡さざるを得なかった彼女に果たして朝は来るのだろうか。
ラストのシーンがせめてもの救いだ。