i
「(-1)の二乗=i」である。このiはこの世界には存在しない。
「この世にアイは存在しない」
数学教師の放ったその一言が主人公のアイに与えたインパクト。
おそらくこの言葉がきっかけで数学の道を歩むことになる。
アイは生まれはシリア。
シリア人でありながらアメリカに養子にもらわれる。父ははアメリカ人、母は日本人。
幼少期をアメリカで過ごし、学生時代は日本で暮らす。
この本、世界の時事ネタがしょっちゅう顔を出す。
どこどこでの大地震。どこどこでのテロにて・・・世界は惨劇で満ち溢れている。
その災害や惨劇での死者の数をアイは漏れなくノートに書き記す。
もともとシリアで生まれた子供だ。
今のシリアの状況を見て、シリアで戦禍に苦しむ子供の映像を見て、自分とこの子は何が違ったんだろう。
死んでいく彼らを見て、何故私じゃなかったんだろう。
と悩む。
何故自分だけ、という強い思いは、あのシリアからだからこそなのか。
アイだからこそなのか。
それは後者なのだろうと思う。
彼女は繊細すぎる。
人は何故存在するのか。自分の存在意義を見つけて行く話。
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この世界にアイは存在しません。
入学式の翌日、数学教師は言った。
ひとりだけ、え、と声を出した。
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この冒頭の書き出しだけで、もはやこの本は成功してしまっている。