真夏の方程式東野圭吾著
海が美しい町、玻璃ヶ浦。
その町に向かう電車の中で、小学五年生の少年、恭平は物理学准教授の湯川学に出会う。
そんな冒頭から始まる今作は、ガリレオシリーズの第6弾、シリーズの劇場版第2弾である。
仕事で瑠璃ヶ浜に来た湯川は恭平の親戚が運営する旅館に泊まるが、同じく旅館に泊まっていた塚原正次が夜中に姿が見えなくなり、翌朝変死体として発見される。
いつもは湯川の大学時代の同期であり、現在刑事をしている草薙俊平が湯川に事件を持ち込み、湯川は警察でなんとかしてくれとわりと淡白(ある意味当然の反応だが)に断る。その後妙なトリックに興味を示した湯川がそのトリックを物理学で解明し、事件の解決に繋げてしまう、というパターンが多い。
しかし今回、湯川は「ある人物の人生が捻じ曲げられる」ことを防ぐ為に事件解決に協力するという。
進んで事件に関わる姿勢、そして苦手としていたはずの少年、恭平とのやりとり。
今作では今までとは少し違う湯川学を見ることができるだろう。
さらについ最近劇場版も見たが、途中湯川と恭平が海を見る為にペットボトルロケットを飛ばすシーン。海の美しさと、夏の暑さも感じるようなあのシーンだけに入場料を払っていいほどのできばえだった。夏も終わりの今だからこそ、より思い入れができたのかもしれない。
原作も劇場版も、東野圭吾作品で特に私が好きな「自身の思惑を一切明かさぬまま、周囲を巻き込み、地位や名誉も全て投げ打って望みを叶える」ような身勝手な人の生き方をみることができた。
やはりそういう身近にいたら迷惑な人の話は、物語の中で読むに限る。