風の中のマリア百田 尚樹著
オオススメバチのワーカーは幼虫からさなぎになり、さなぎから成虫になって飛びまわる様になって約30日で寿命を迎える。
彼らは昆虫の世界では最強の兵士で、イナゴを丸め肉団子にし、アシナガバチを肉団子にし、コガネムシを肉団子にする。
まさに狩りを行うのだ。
帝国の繁栄のために戦う戦士達。
その帝国も帝国の女王の引退、次世代の女王たちの誕生を迎えるとその繁栄を終焉させ、新たな女王たちがまた新天地で帝国を築く。
壮大な物語のようで、実はSF的なフィクションではない。
描かれるのはオオススメバチの生き様そのままなのだ。
西洋ミツバチはオオススメバチの餌食となるが、日本に昔から住んでいた日本ミツバチはオオススメバチの撃退法を知っていたりする。
逆に日本ミツバチは西洋ミツバチに襲撃されると全く成すすべもなく無抵抗のまま死に絶えてしまう。
いにしえの時代からの遺伝情報に西洋ミツバチなどは存在しないからなのだろうが、全くもって摩訶不思議。
彼らがゲノムがどうの、と話しだすあたりはかなり面食らうが、彼らが会話したり、思考したりするところ、そういうところ以外の虫達の生態についてはほとんどノンフィクションと言っても過言ではないのだろう。
作者はオオススメバチをはじめとする昆虫の生態をかなり詳細に調べ込んでいる。
なんとも不思議で斬新な作品なのだ。