アイネクライネナハトムジーク伊坂幸太郎著
短編だと思わせておいて、最後の方で実は全員つながっていた、みたいなパターンなんだろう、と思って読み始めたら、いきなり二篇目から繋がってた。
最後で繋がるどころか、全編にわたる人物が複雑につながりまくってる。
実はこの一篇は過去の話で、誰某は誰某の娘で誰某と友達だった誰某は誰某の会社の先輩の娘で・・・みたいな。
人間関係、複雑すぎるだろう。
マーケットリサーチ会社に勤める男が夜中の街頭でアンケートを取るはめに。
本来はサーバの中に鎮座しているはずのマーケティングデータが、システム管理担当の先輩のチョンボでぶっ飛んでしまったためだ。
そこでアンケートに答えてくれたフリーターの女性。
その女性とあるところで再開するという、割りと平穏な出だし。
次の舞台は美容院。
美容院の常連客が弟を紹介するという。
断ったが、客は勝手に携帯の電話番号を教えてしまい、弟君と週に二三度、長電話をする中に。お互いにあったことも無い相手と8カ月以上電話だけでデートをしているようなもの。
その相手が誰だったのか判明した時はさすがにぶっ飛んでしまいましたね。
客とトラぶったりして一方的に罵られている女性への助け舟として、さも罵っている男を心配してあげているかのような「この方は誰の娘さんかご存知ですか?」作戦。
この作戦が、軸になっていろんな人に伝授されてまた、その繋がりが見えてきたりする。
なんとも面白すぎる構成だ。
他にも日本人のヘビー級プロボクシングのタイトルマッチ、これも縦軸の一つか。
ある一篇の中で広告代理店のクリエーターがいかに大変か、という話になる場面がある。作家やアーティストは一度、探し出した金鉱と同じ路線を掘り続ければいいのだが、広告のクリエーターに二番煎じは無い。それって前にもあったパターンだよね、が通用しない、常に新たな発明をし続けなければならない、云々。
(近年はシリーズもののCMってのも多くなってきたかもしれないが・・。)
でもどうだろう。
伊坂さんの作品って、充分に新たな発明ばっかりじゃないの?