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日本軍はこんなに強かった


日本軍は確かに強かったんでしょう。

だからこそアメリカを本気にさせてしまった。

この本、まず真珠湾から始まる。

真珠湾攻撃はゼロ戦の脅威的な航続距離が可能にしたわけだが、いくつもの本に書かれている通り、これを勝ち戦として絶賛するのは当時の日本と同じじゃないだろうか。
叩くなら戦艦だけじゃなく空母を見つけ出して徹底的に叩いてしまわないと。
ただ、そうしたところで敗戦が少し遅くなるぐらいのことだろうが・・。

いずれにせよ、真珠湾攻撃がアメリカを本気にさせてしまったことだけは確かだろう。
真珠湾さえなければ、アメリカがあれだけ徹底的に日本を叩くことも、戦後徹底的に骨抜きにしようとすることも無かったかもしれない。

山下奉文将軍のマレーの虎や、マレー沖海戦と勝ち戦の話が続くが、いずれも序盤戦。
序盤、強かったことは、誰しも知っている。特に秘録でもなんでもない。

この本、負け戦に対する分析が無さすぎて、どの局面でも強かった日本軍、勇敢で優秀な日本兵の記述一辺倒。

井上さんにこれを書かせた背景には、戦後あまりに戦時中の日本軍が貶められているので、それに反駁する気持ちからなのは良くわかるが、これだけ勝ち戦の箇所ばかりを強調して書かれると、まるで大本営発表?との誹りを受けてしまいかねない。

ラバウル航空隊の時代には数多の歴戦のエースパイロットが揃っていたのだろう。
その個人成績を並べる記述よりも、百田さんの「永遠の0」の方がしっくりくる。

序盤戦、エースパイロットが揃っていたにもかかわらず、どんどんその数は減って行き、アメリカの方は、どんどん熟練パイロットが育って行く。

個々の兵は確かに勇猛果敢で優秀だったかもしれない。
でも片道燃料で出撃させる指揮官は優秀と言えるのか。

果ては、特攻隊の成果を褒め称え、人間魚雷に至っても褒め称える。

日本軍は序盤は強かったかもしれないが、兵の命の重みを軽んじすぎたんじゃないのか。

この本の貴重な点は、体験談の大半は、生前ご健全であられた時にに残された文章を拾っているが、まだご存命の方が残っている間にこれだけ生の取材を試み、言葉を残している点についてだろう。
もう何年かしたら、こんな言葉はもう拾えない。

日本軍はこんなに強かった! 大東亜戦争秘録 井上和彦 著



希望荘


ペテロの葬列の杉村三郎が探偵としてデビューする。

四部作でそれぞれが独立した一篇一遍。
どこかでつながるのかな、と思ったりもしたが、それぞれが独立した短編だった。

死んだはずの人を見かけた。幽霊かどうかを調べて欲しいというのが最初の依頼。

それにしてもこの探偵さん、フットワーク軽いね。動くのなんの。
そんじょそこらの営業マンよりよっぽど稼働率が高いわ。

次の依頼は死ぬ間際に、自分は過去に人を殺したことがある、と匂わせる様な事を息子に言って世を去った老人の息子が、どうしても気になり、父の過去を調べてくれ、という。

三話目は、ペテロの葬列の一連の後、コンツェルンを飛び出した主人公が実家に帰り、そこで後に世話になる蛎殻オフィスというなんでも出来てしまう探偵会社の社長から頼まれごとをする。

自ら探偵事務所を開くきっかけになったのは言うまでもない。
ここでは戸籍の売買というのがキーなのだが、敢えて戸籍を買った人の目的が今一不明。
それにそても蛎殻オフィスさえあれば、世の中に探偵事務所なんて要らないんじゃないか、と思えるほどにこの事務所の存在は圧倒的だ。

四話目は、東日本大震災で行方不明者が相次いだことをうまく利用した犯人のトリックを暴く。

三話目の過去の思い出は、ともかくとして、残りの三話、杉村探偵、かなり積極的に動いているが、その報酬たるや仕事量に見合っているのだろうか。下世話な話だが・・。
いくら独身ぬいなって食わせる相手が居ないったって・・・。

まぁ、ていうような杉村三郎氏だから、みんなに愛されるんだろう。

希望荘 宮部みゆき著



近代オリンピックのヒーローとヒロイン


オリンピックの創始者 クーベルタン、日本の初代IOC委員 嘉納治五郎からはじまって金栗四三、人見絹枝、西竹一、前畑秀子、フジヤマのトビウオこと古橋廣之進らの名前が並ぶ。
名前を聞いたことがある選手もたまにはいるが初めて見る名前の方が多い。

戦前のオリンピック選手というのは、なんとも心意気が凄い。
今の様に飛行機で海外へ行ける時代じゃない。
船旅、列車旅で練習や体調管理どころじゃない。

人見絹枝というひとなどは、短距離でメダルを期待されるが、決勝進出が適わなかった。
負けたままでは生きて日本へ帰れない、と初めてトライする800メートル走に急遽エントリー。
そしてなんと銀メダルを取って帰国する。

戦後も女子バレーボールの「東洋の魔女」を育てた大松監督、男子バレーボールの監督、最後は北島康介などが紹介される。

この本の各章立てのタイトルになるような選手たちは、名前さえピックアップされれば、今のご時世、その生い立ちやら成績など活躍ぶりは、検索などで容易に集める事が出来る。

この本は、そういうざらにある話ではない、エピソードをどれだけ集められるかなのだが、もはや存命で無い人も多い。
筆者が取材して廻ってのエピソードというより、当時の新聞やら本人談などを集めて作られたものが大半だろう。

エピソードと言う意味では、各章と章の間にあるコラムの方がよほどエピソードらしい。

あの映画「ターザン」の主人公が実は金メダリストだったとか。

裏方さんである選手村の理髪師の話や料理責任者の話などは、なかなか見つけることが出来ない。

それにしてもまぁ、どんな手段であれ、良くこれだけオリンピックにまつわる話を集めたもんだ。


近代オリンピックのヒーローとヒロイン 池井 優 著