よろこびの歌
オムニバス形式で短編が繋がっていくお話。
第一話の主人公、玲と言う名の女子は音大付属を受験するが、まさかの失敗をし、他に何も考えていなかったので、新設校に入学することにした。
挫折した人ばかりが集まる学校なんだろう、と心を閉ざし、誰とも話さない。
そんな彼女が合唱コンクールの指揮者に指名されるが、皆は彼女の厳しい指導について来れず、結果は惨憺たるものに。
この学校、行事が大好きで行内合唱コンクールの次はマラソン大会。
走るのが苦手な彼女、最後尾からもうよろよろ状態で最後のトラックを廻っている時に聞こえた皆の歌声の素晴らしさに感動する。それは合唱コンクールでの課題曲だった。
そこから彼女は変わって行く。
音楽教師から合唱コンクールのリベンジを言い渡され、玲の厳しい指導のもとで合唱の練習が再開する。
その中には、第二話の語り手、家がうどん屋の同級生が居たり、
その次の、中学時代はソフトボール部のエースで四番だった同級生が居たり、実はこんな人だったの、という学級委員長が居たり、霊が見える子が居たり・・・。
あまり自信のない人が、周囲との関わりの中の中、だんだんに自信を付けて行く、というのが宮下奈都さんの定番の様に思っていたが、この本もそういうところはあるが、皆で何かを成し遂げて行こうとする、この一連の話が、宮下奈都さんの中でも一番のような気がする。