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ミッション建国


日本の少子化問題、将来世代へ先送りの社会保障、東京一極集中による地方・東京の格差。
これらの諸問題をなんとかしようと立ち上がったのが若手の国会議員達。

誰がどう見ても小泉進次郎だろうと思われる主人公が誰がどう見ても中曽根康弘だろうと思われる人物に教えを乞うたりする。

案として出て来るのが、老朽化して過疎化して来たかつての子育てのメッカである公営団地や東京オリンピックが終わった後の選手村を若い世代に新たな住まいとして提供し、その中で教育も充実させ・・・云々。
また、早めにの結婚・出産を促進し子育てを終えた女性に再教育の後、第二新卒として社会で活躍してもらうなどなど。

現実界では、まさに第2次安倍内閣が発足し、女性の社会進出。地方の活性化を政策の目玉に引っさげた。

東京の一極集中を回避する特効薬ならこちらにもアイデアはある。

まさにこれからやろうとする法人税減税がそれだろう。

ただし、これを東京だけは減税じゃなく50%まで増税とし、東京以外の首都圏は現状維持。
その他の地方に関しては半分以下の大幅な減税。

かつては各地に本社があったはずが、どんどん本社機能を東京へ集中させているのが、現状。

それを元に戻すにはこれっきゃないじゃないのだろうか。

ものすごい名案だと思うんだけどなぁ。

維新の橋下さんあたり、言い出さないかなぁ。

とまぁ、この本、ミッション建国の内容からは大幅にはずれてしまったが、小泉進次郎が都知事にでもなったらますます東京に集中してしまいそうなので、敢えて話題をそらせてみました。



女のいない男たち


彼女を作らない草食系男子を描いた本ではない。

「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」
の短編が集まった本。

ドライブ・マイ・カー
妻に先立たれた俳優が、生前の妻の不義を女性運転手に吐露する。
この女性の規則正しい運転が小気味いい。

イエスタデイ
関西弁を話すことをやめた芦屋生まれ芦屋育ちの大学生が主人公。
逆にバリバリの大阪弁を話す田園調布生まれ田園調布出身の友人。
彼が歌う大阪弁の変な歌詞をつけたビートルズのイエスタディ。

独立器官
父親の跡を継いだ美容整形外科の渡会医師。
生まれた時から恵まれた環境で育った彼は、生涯、結婚をしたいとは思わない。
だから、付き合う相手も既婚者か特定の付き合っている人がいる相手、つまり結婚を迫られる心配の無い相手とだけ付き合っているのだ。
適度な期間付き合ってはスマートに別れる。
そんな独身生活を謳歌していた彼がある時、本気で女性に恋をしてしまう。
その後の変わりようがなんとも痛ましい。

シェエラザード
浅田次郎に同名の大作が思い浮かぶが、それとは関係は無い。

何か施設のようなところに閉じこもった生活をしている男のところへ、週に何度か、冷蔵庫の中身をチェックしながら、買い物をして届けてくれる女性が派遣される。

まるで決まり事のように彼女と男は肌を重ね、その後に彼女の語りが始まる。

この短編の中で一番印象に残っているシーンは彼女が前世はヤツメウナギだったいうあたりか。

ヤツメウナギになりきって水底でゆらゆらとしながら、水面を見上げ、獲物を待つ。

そんな生き物に詳しいだけでもかなり珍しい人だが、その生き物になり切れる。

なんて想像豊かな女性なんだろう。

このいくつかの短編のなかで印象深かったのは、渡海医師の話か。

いや、やっぱり、ヤツメウナギだろうな。



小暮写眞館


高校生が主人公の物語。

彼の周辺に登場するのが、普通のサラリーマン家庭なのにちょっと変わり種の父親と母親。
引っ越し先に選んだのが、売り手が「駐車場にするしかないか」と思うほどに家としての価値が無い古い写真館。
写真スタジオがリビング。その写真館の看板もせっかくだから、とそのまま残す。

高校生の名前は「花菱英一」なので下の名前の英一を省略して息子を呼ぶ分にはいいが、彼の友人が「花ちゃん」と呼んでいるからと言って、父も母も弟までも「花ちゃん」と呼ぶ。
何かおかしい。

テンコという幼なじみの父親もちょっと変わったキャラクターで、誰に似ているか、と聞かれれば、その世代によって全く別人に見られてしまう人。

ある年代には草刈正雄、ある年代にはキムタク、またある年代には・・と全く別人に似て見える、という不思議な人。

そんな不思議な周囲に囲まれながら、英一はいくつかの「心霊写真」と思われるものの謎を解明する。 
という変な話なのかと思ったら、それは単なる前振りだった。

7年前にたったの四歳で亡くなった英一の妹。
その妹の葬式で、母は祖母をはじめとする親戚から鬼のような言葉の数々を浴びせられ、そんな言葉が無くっても、家族皆が全員自分のせいなのだ、と自分を責めている。

不動産屋の超無愛想事務員の手を借りながら、そんな状態から脱皮していく話でもあった。

それにしても英一君、高校生にしては守備範囲広すぎないか?