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独居45


なんだろう。
異物を飲み込んだようなこの変な感じ。

冒頭から読めば読むほど、気分が悪くなって行く。
途中で何度、読むのを放棄しようと思ったことか。

それでも新聞の書評やらでやけにベタ誉めしていたしと、続行していく内にどうにも気分の悪かった話がだんだんと最後はどうなるのだろう、と最後まで読みたくなってしまうのだから不思議だ。

ある街へ一人の男が引っ越してやってくる。
男は何故かいつも上半身裸。
彼は作家なのだという。

彼の主張は、
人間の残虐性は何もナチスドイツに限られたことではない。
人間はみな、残虐性を持っている。
人間はみな、人間という同類を殺しまくる残虐極まる狂った種であるという考えを持ち、本ばかりか講演会でもその考えを街の人にぶつける。

その後、家の中に籠りっきりとなるが、その家の中からは呻き声や悲鳴や絶叫が家からは聞こえて来る。
そればかりか屋根に血に塗れた全裸の女マネキンを置いてみたり、巨大な手を据えてみたり・・・と、彼の奇怪な行動はエスカレートし、子供達からは妖怪退治だとばかりに窓へ石を投げられる。
やがて町民の方もエスカレートし、街のいわゆる普通の人たちが彼に石を投げ始める。

くしくも彼の主張通り、普通の人たちが自分たちの常識の範疇外の行動を取る人間に対しては残虐性を発揮してしまうわけだ。

それにしてもまぁ、この本に登場する男たちはなんでこんなに至る所で勃起するのだろう・・・。

独居45 吉村萬壱 著



死もまた我等なり


クリフトン年代記の第二部。

第一部の「時のみぞ知る」では、貧しい家庭で育ったハリーがオックスフォード大学に入学し、グラマー・スクール時代から親友だったジャイルズ(彼はバリントン海運という大企業のオーナー家の御曹司)の妹エマと愛し合い、結婚直前まで行くのだが、ハリーの母親とジャイルズの父、ヒューゴー・バリントンの間に生まれたのが自分かもしれないことが発覚し、結婚を断念してアメリカ行きの貨物船に乗る。
その後、貨物船はドイツのUボートの魚雷で沈没。
ハリーは生き残るが貨物船で一緒だったアメリカ人のブラッドショーを名乗る決意をする。
ところがブラッドショーは逃亡兵の上、殺人の容疑者だったために上陸と同時に逮捕。
ここまでが第一部。

かなり気を持たせたものだ。
まさか、主人公をいきなり刑務所に入れてしまうのか?というところで一部が終わるので否応なく二部を読むことになる。
そしてそのまさかで、主人公はいきなり刑務所に入れてしまうのだった。

それでも優秀な彼は刑務所でも図書係として卓越した能力を刑務所の所長に認められる。
やがてその刑務所で送った生活を綴った日記が他人の手によってベストセラーとなる。
エマはその日記を読み、ハリーが生きていることを確信する。

また、友人のジャイルズは本国英国軍の士官として前線で。
方やハリーは米軍の一員として、こちらも命がけの活躍をする。

この二部ではこのシリーズで唯一で最悪の悪役であるヒューゴー・バリントンも終焉を迎えるので、一応物語としては完結させてもいいだろうに、上下巻を終えて尚、今後のくすぶりの種を残したままの終わり方をする。

それにしてもこのヒューゴー・バリントンという人、父も母も元妻も息子も娘も親戚一同揃って、悪役のあの字も無いような健全な一家の中に居ながら、たった一人だけ小物で臆病者で悪知恵しか働かない。
実際に悪知恵どころか悪事に手を染める。
どうにも一人だけ浮きすぎている。

ハリーの血筋を問題とするよりも、ヒューゴーの血筋を調べた方がいいんじゃないかと思えてしまう。

いずれにしろ、第一部上下で完結せず、第二部上下でも完結しなかったクリフトン年代記、またまた第三部待ちということに・・・・・。

死もまた我等なり  ジェフリー・アーチャー 著



ボックス!


こんなのもあのベストセラー作家の百田尚樹氏の作品。

新今宮の近くにある恵比須高校という架空の高校のボクシンブ部の話。
このあたりで勉強もある程度出来る高校となれば今宮高校あたりを想像してしまうが、それは無関係だろう。
他に登場する高校のモデルはおおよそ想像がつく。
ライバル稲村は架空だろうが所属する学校などは興国高校以外には思い浮かばない。
大阪朝鮮などはそのままの名前で登場だ。

主人公君は勉強は出来るが、自他共に認める運動神経0の高校1年生。
幼なじみの友人が別の中学を経由して同じ高校に。その高校のボクシンブ部に所属する。
別の中学時代はイジメにもあっていた彼にとっての憧れの存在。
彼は運動神経抜群、小さい頃からケンカも強く、いつも助けてくれた。

持って生まれた才能を持ち、フェザー級で大阪府優勝。

そんな憧れの友人には到底かなうはずも無いと思いながらも、ボクシンブ部への入部を決意する主人公。

監督からジャブだけを打てと言われたら、ひたすらジャブだけを猛特訓する。

ようやく次のステップへと進んでも決して、習ったことを外さない。
それ以外のことはやらない。

晩のランニングも早朝ランニングも欠かさず、人の何倍も努力が出来る。
そう。この少年には「努力が出来る」という才能があるのだ。

みるみる上達して行くこの少年。
やがて憧れの友人をも追い抜き、高校で負け無しのモンスター高校生と評されるライト級チャンピオンと闘う。

ボクシングを題材にした小説は少ないが最近では角田光代の「空の拳」がある。
女性目線という意味ではこの物語にも女性教師の目線からも描かれるが、周囲の解説がそんな目線を打ち消してくれる。

特に試合の最中の場面などは、迫真の筆致でその光景が目に浮かぶ。

努力は決して裏切らない、ということを教えてくれ、読者に感動と爽やかな読後感を残してくれる素晴らしい本だ。

百田氏のことは「海賊とよばれた男」が出るまでは知らなかったが、「永遠の0」といいこの作品といい、その当時から百田尚樹氏は只者じゃなかったのだった。

ボックス!  百田 尚樹 著