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悲惨伝


四国第二弾。
徳島へ舞台が移る。

西尾維新の四国巡り。
悲痛伝の香川県では、讃岐うどんを堪能するし。
なんだかたっぷり四国の観光巡りをしてそうな書きっぷりではないか。

四国八十八箇所の札所の中でも最も難所と言われる山にも行ったんだろう。

吉野川上流の秘境と呼ばれる渓谷へも行って来たのだろう。
そうでなけりゃ、書けないわなぁ。

これで、四国一周ツアーが決定だ。
次作は高知で次々作が愛媛か。
はりまや橋やら、桂浜やら、暑さ日本一を更新した四万十あたりも観光取材して来てるんじゃないの。

なかなか四国編だけでも長丁場となりそうだ。

地球との闘いがどんどん霞んで行く。

今回は魔法少女でも魔法の桁が一回りも二回りも違うレベルが登場する。
大気を司る力を持つ少女。
水を司る力を持つ少女。
もはや神か?

そのさらに上をいきそうな魔女なる存在も登場してきた。
不明室が開発して一週間を期限に四国に投下されるはずの新兵器が核爆弾でもなければ四国全土を海に沈めてしまう爆弾でもないこともわかってきた。
その新兵器も登場してきそうだ。

はてさて、どんな四国紀行が出来あがって来るのやら。

悲惨伝  西尾維新著



明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち


芥川賞の選考委員として、結構厳しい選評を書く人なので、最近はいったいどんな本を書いている人なんだろう、と一番の新刊を読んでみることにした。
「ベッドタイムアイズ」の頃と対して変わらないなら、二度とこの人の本は読むまい、と心に決めて。

で、結論を先に書くと、「さすが」でした。
芥川賞の選考委員として新人の作品をボロクソに言えるだけのことはあるわなぁ。
というのが素直な感想。

この本、タイトルからして、人にお説教でもしている類の本かと思ったが、さにあらず。

家族の中のとても大事な人が亡くなった後のそれぞれの人の心の中、残された家族の有りようを描いている本だった。

父が家を出、母とその子供兄妹の三人家族。
その母が、妻と死別し、男の幼子を抱えた男性と再婚することになる。
その結婚を子供達に打ち明ける時には既に母のお腹の中には、妹が誕生していたのだから子供達に相談するまでもない。

この家族の一番上の兄というのが、心の優しいおもいやりのある子なのだ。
母と義父が結婚した時点で、お腹の子を含めると子供は四人。
その中で母の血をひいていないのは義父の連れ子の男の子だけ。
だから彼が疎外されることがないようにと気を使う。

この兄がいたから二つの別々の家族もすんなりと一つ家族の家族になれた。

そんな兄がまだ高校生の時に事もあろうに雷に打たれて死んでしまう。

残された家族はそれでも一つになろうとするが、母だけが違った。
わがままで自分勝手で人の心をずたずたにする人であり続けた。

兄が死んだ後、アルコールに溺れ、依存症として入退院を繰り返す。

気を使って世話をやく次男に対して「なんであの子だったの?あなたじゃなくて」って。
普通の子ならもう心はナイフでずたずた状態といったところだろう。
この子はこんなにずたずたにされながらも母に寄り添おうとして行く。

子供達三人はそれぞれ成長して行くのだが、長女は兄の死以後、誰かを愛すれば愛するほどに、その人を失うかもしれないという恐怖心から結婚には踏み切れない。この妹がこの兄を思う気持ちはそんじょそこらの恋人達よりよほど強かったのだ。

弟は母ほどの年齢の人と付き合い始める。

大切な人の死がそれぞれの人にどんな影響を及ぼすのか。
皆が生きている時には見えなかった人の心根の本質のようなものがさらけ出される、なかなかにしてフカーイ本なのでした。

明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち 山田 詠美 著



暦物語


この本はちょっといただけない。

西尾維新にしてはありえないぐらいにひどすぎる。

西尾維新の本の中でもこれまで何度もチンタラ展開しているなぁ、とか、なかなか進展しないなぁ、この話、とか、極端なものではこの前半部分全部無くてもストーリーとして成り立つよね、みたいなことは往々にしてあったが、そりゃ読んでいる方にすれば、次の展開、次の展開、とうながしたくもなるのだが、じらしてじらして、またそのじらしのどうでもいいところが結構面白かったりして、まぁなんだかんだと言いながらも楽しませてもらっているのでOKなのだろう。

ここ一年を振り返ったから暦物語なのか、阿良々木暦だから暦物語なのか、おそらく両方の意味なのだろうが、あの春からの出来事ならめぼしいところはすべからく本編に書かれているはず。
今さらそのおさらいをしても仕方がないし・・。

だから、ささいな小さな小さな話小さな話を4月5月と月に一つずつ十二ほど。

小さくまとまった話。他の小編小作家なら、まぁまぁの評価をもらうのかもしれないが、こんなつまらない話を西尾維新に期待している人はいないだろう。

本人が積極的に書いているとは思いづらい。

悲鳴伝の続きの悲痛伝、悲惨伝で四国にのめり込んで四国参りをしている作者に、なんとか最終版までのつなぎを!と編集者が無理矢理に書かせたような光景が目に浮かんでくる。

もし、そうだとしたら、編集者も余計なことをしたものだ。

こんなものを世に出すぐらいなら、読者をひたすら待たせておいた方がはるかにいい。

暦物語 西尾 維新 著