ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 


絶対に女性にしか書けない本なんだろうな。

正直言って、途中で読むのを断念しかけそうになってしまった。
地方に住む女性ならではのコミュニティ。
そのコミュミティのなかでの生き方、ルール・・えーい!面倒くせえ!と放り出したくなったが、最後まで読んでやはり良かった。

大人しくて素直で、母子の仲はむつまじい幼馴染の女性。
そんなかつての親友が母を刺して逃亡している。

都会で雑誌のライターをしていた主人公は彼女を探し始める。
しかも事件が起きてからしばらく経ってから。

何故彼女を探そうとしているのか。
何故富山の赤ちゃんポストに執拗に拘るのか。

何故、ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナなどというタイトルなのか。

最後まで読めばその意味がわかる。

女性の勝ち犬とか負け犬とかという言葉はあまり聞いたことがなかったが、本当に流行った言葉なのだろうか。
勝ち組、負け組と同様に嫌な響きの言葉だ。

勝ち犬か負け犬かは知らないが、幼馴染みの同僚の及川という女性の言葉は、その元親友やその親しい人には反感を覚えるかもしれない言葉だが、かなり物事の本質をついているような気がする。
・母親が子離れ出来ていない。
・娘も親離れ出来ていない。
・自分の人生へのモチベーションが低すぎる。
・自分の人生の責任を人に求めて不満を口にするだけ。
・格差は学歴にあるのでも仕事の形態にあるのでもない。意識そのものに格差がある。

上の言葉はこの本の本題とは無関係なのだが、これらの言葉は地方で働く女性だからではなく、都会であれ地方であれ、男性にも女性にも、若者にも壮年にもいや老人にさえ当て嵌まる人には当て嵌まるのではないだろうか。
ストーリーそのものはそれはちょっと・・という展開ではあるが、なかなか考えさせられる本であることは確かだろう。

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 辻村 深月 著