カテゴリー: サ行



アイアン・ハウス


恋人の妊娠を機にギャング組織を抜けようとする凄腕の殺し屋マイケル。
親分はそれを許しているのだが、余命いくばくもない。
親分の意に反してその組織のNO.2、NO.3はマイケルが組織を抜けることを許さない。

連中は恋人の勤務先であるレストランを意図も容易く爆破させて中に居た者を一人残らず、消滅させてしまう。

マイケルはかつてアイアンハウスという施設で育ち、弟が居たのだが、弟は裕福な家庭の養子として迎えられて行き、マイケルはストリートでギャングの親分に拾われる。

この物語、ギャング組織の連中 VS マイケル という話と併行して、不気味な殺人事件が起きあがる。

かつてアイアンハウスで弟を苛めた連中が次々と死体となって発見される。

これはスリラーというジャンルに位置付けられているが、スリラーというよりはミステリーだろう。

弟はどうも多重人格としか思えない症状が現われている。

アイアンハウスで自分を最も苛めていた少年をナイフで刺してしまうのだが、その時点から弟には別人格が現われている。

大人になった今になって次から次へと現われる死体に弟はどう関わっていたのか・・・。
結構、以外な結末が待ちうけてはいますが、この本、結構なボリュームですよ。

読みだした以上、結論を知らずにはいられないが、なかなかにして長いのです。

読まれる方はそのあたりを覚悟して読まれるとよろしいでしょう。

アイアン・ハウス  ジョン・ハート著 東野さやか訳



ビヨンド・エジソン


12人の博士が見つめる未来

取り立てて有名な人が出て来るわけではない。

それでもその道ではおそらく知らない人はいないほどに道を極めた人達。

アフリカの睡眠病という奇病に挑み続ける博士。

若い頃から恐竜好きで恐竜の学問が出来るなら海外だろうがどこへだろうが、飛んで行くような女性恐竜博士。

乾燥地で植物生産の向上を目指す農業気象学者。

言葉の不思議を探究する音声工学者。

・・・と12人のまだまだこれから活躍するであろう年代の博士が登場する。

第一章の寄生虫学者は幼い頃、シュバイツアーの伝記を読んでシュバイツアーに憧れたという。

この本は全てドキュメンタリーであるが、ある一面12人の短い伝記と言ってもいいだろう。
彼らに共通するのは、国境や言語の違いなど全く厭わない、そんなことはまさに小さな問題だとばかりに世界の各地へ飛び立って行くフットワークの軽さ。
国境や言語の壁などよりもはるかに探究心が勝っている。

ビヨンド・エジソン。確かにその世界ではエジソン超えている。

皆、若い頃に良き師と呼べる人に巡り合い、そこでは満足出来ずに自身の研究を続け、師を超える、もしくは師とは少し違う方向において師と並び立つ存在になっている。
ここに出て来る人達を知っているか、と聞かれたら100人中99人は知らないかもしれない。
それでも彼らの研究は地球に爪痕を残すに十二分のものだろう。

こび本の出版にあたっては、筆者から取材を受けたことであろう。
その取材の結果が、このような本となり、自身で読んでみた感想はいかがなものなのだろう。
くすぐったく思った人もいるかもしれない。
それでもこうして本になってささやかながらも若者に夢を与える側に立ったのだ。

この本の出版がこの先生方のさらなる励みに繋がって行けば、喜ばしいことである。

ビヨンド・エジソン 12人の博士が見つめる未来 最相葉月著



藁にもすがる獣たち


父親の代から永年営んで来た散髪屋でなかなか食っていけなくなり、閉めて職探しをしてみたはいいが、仕事など若い者でもなかなか見つからないというのに、歳を食った者がそう簡単に見つかるわけがない。
ようやく、つてを頼ってで見つかったのがサウナでの夜勤仕事のアルバイト。
たった一人で、受付から、酔っ払いの相手から、仮眠室での就寝チェックやら、何から何までやって、その上、若造の支配人にはことあるごとにいびり倒される。
それでも最低金銀の時間給。

妻がパートに出ているので認知症の母と同居しながらもなんとかカツカツに食っていけている。

その妻が階段から落ちて入院してしまう。

命に別条はないが、リハビリを終えるまでには相当な時間がかかる。
嫁いだ娘から金を無心されるが、余剰資金などはこれっぽっちもない。

認知症の母を放っておくわけにも行かない、ギリギリの選択の時にサウナへ置き忘れられたドでかいカバンの忘れものを思い出す。

数日前にドでかいカバンを肩から下げて 真夜中のサウナに来た男。

タバコを買いに行ったままとうとう戻らなかった。

そのドでかいカバンの中には、札束の山が・・・。

上の元散髪屋のオヤジの如くに、まさに藁にもすがらんばかりところまで来た人物があと二人の登場する。

FXなんぞに手を出したばかりに借金苦となり、夫からはDVの対象となり、自らは人妻デリヘルとして働く女。

ヤクザに借金をしてしまい、ヤクザから追い込みをかけられる刑事。

それぞれが同時並行で進行している話なのかと思えば、微妙に時間差があった。

その時間差が最後に絡み合ってそれぞれが繋がって行く。

まぁちょっとした時間つぶしには、楽しめる一冊かな。

藁にもすがる獣たち 曽根圭介 著